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北海道で脳神経外科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、脳神経外科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
まず、脳神経外科でクリニックを開業するメリットとデメリットについて、さまざまな視点から考えてみましょう。
脳神経外科は専門性が高いため、他の診療科との競合性が低い医療分野です。エリアにもよりますが、競合先が少ない診療科であること、これは開業における大きなメリットのひとつです。北海道の場合、特に地方であれば独立開業医の競合先がゼロというケースも珍しくありません。
また、高齢化によって脳血管疾患に対する医療ニーズが高まっていることも開業するうえでは追い風となってくれるでしょう。医療連携をしっかり構築することで多くの紹介患者を獲得することも期待できます。このように、集患力の高さも脳神経外科の強みといえそうです。
脳神経外科の場合はMRIやCTなど高度な診断機器を導入する必要がありますが、これらを近隣のクリニックと共同利用できれば経営面でもプラスになるでしょう。
「高度な診断機器を導入する必要がある」とお伝えしましたが、まさにそこが脳神経外科のデメリット、つまり開業資金が高額になるということです。特にMRIは本体だけではなく保守料金などのランニングコストも高額になりがちなので、絶えず稼働させるためにはそれなりの検査対象患者さんを確保しなければなりません。また、MRIの場合は本体重量の問題もあるので、テナント開業の場合はビル1階部分でなければ難しいでしょう。
脳神経外科はリハビリテーションも収益の柱となりますが、そのためには相応のスペースや設備、何より専門スタッフの採用が必要です。こういった部分でも費用がかさんでくるのが脳神経外科クリニックの課題といえるでしょう。
次に、脳神経外科クリニックの開業を成功に導くポイント、逆に失敗につながってしまうようなポイントを見ていきましょう。
脳神経外科での開業を志すドクターであれば、基幹病院クラスの医療機関に勤務しているケースが多いのではないかと思われます。その場合、前の勤務先と良好な関係を続けることが、クリニックの成功につながるカギになります。
たとえば、開業後も以前の勤務先病院をオープンベッドとして使わせてもらえれば、手術や入院はそちらでお願いすることができます。オープンベッドは以前の勤務先病院にとって経営面でのメリットがありますし、一方で紹介状のない初診患者さんや急性期医療を脱した患者さんをクリニックに紹介してもらえれば、双方Win-Winの関係を構築することができるでしょう。
このように、成功している脳神経外科クリニックは病診連携・診診連携が上手くいっているケースが多くあります。
脳神経外科クリニック開業の失敗事例の多くは、開業資金やランニングコストを甘く見積もってしまったことに起因しています。脳神経外科における代表的な高額医療機器といえばMRIですが、札幌市のような都市部では画像診断センターを有する病院や画像診断専門クリニックも増えているため、新規開業の脳神経外科クリニックがMRIを導入しても思ったように稼働が伸びず、経営が悪化するケースは多くあります。
加えて、医療機器や保守料金の価格交渉がそもそも上手くいっていなかったという部分もあるでしょう。医療機器の適正な価格相場を開業医が把握するのはなかなか難しいので、業界に精通したコンサルタントやアドバイザーがついていないと、こういうことになりがちです。
脳神経外科クリニックは医療連携がクリニックの経営に大きく影響するので、前の勤務先との関係を良好に保つため、円満に退職できるタイミングを見極めることが大切です。
脳神経外科は開業医の数が少ないので、必然的に広いエリアからの来院患者さんを見込めます。そのため、開業地を検討する際には最寄り駅から近いことが条件のひとつとなります。一方で北海道は車社会という面も考慮し、駐車場の確保についてもしっかり検討しておきましょう。建物などのハード面では、車いすや杖を使用している患者さんも多いので、バリアフリーは必須だと考えてください。頭痛やめまいの患者さんのために照明への配慮も忘れてはいけません。
また、脳神経外科の領域は求められる医療レベルがどんどん高くなっています。脳卒中をはじめとした脳血管障害や脳腫瘍、小児特有の脳脊髄疾患など診療の幅も広いので、クリニックだけで診断や治療を完結することが難しいケースのほうが多いでしょう。認知症の患者さんも増えているので、ご家族の視点では脳神経外科を頼ってくるケースもままあります。
脳神経外科における医療連携の大切さをお伝えしましたが、むしろこういった面でのほうが連携の重要さが際立ってきます。近隣に連携できる医療機関があるかどうかで患者さんに提供できる医療のレベルも変わってくることも、開業地を検討する上で重視すべきでしょう。
脳神経外科は設備投資が高額になりがちで、リハビリテーションへの力の入れ方によっても開業資金は大きく変動します。たとえばテナント開業でMRIを導入するとなると、少なくとも1億5千万円は見込んでおいたほうがいいでしょう。
年収に関しては、脳神経外科医師としての平均年収は統計データに存在しませんが、クリニックの経営が安定してくると開業医全体の平均年収を上回る収入を得られるという見方が一般的のようです。
北海道の場合はいわゆるメガバンクよりも地方銀行や信用金庫のほうが、クリニックの開業融資に積極的な印象があります。ただ、脳神経外科の場合は開業資金が高額になることも多いため、日本生活金融公庫との協調融資などを検討するのもいいでしょう。
いずれにしても、資金調達に必要な書類をドクターだけで作成するのは困難です。開業コンサルタントなどの専門家に相談したほうがスピーディーかつスムーズに話を進められます。
それでは、クリニック開業までにどのようなプロセスを経て、どのような課題をクリアしていくのか、実際の流れを説明しましょう。
どの診療科にもいえることですが、クリニックの開業を決意した時点で診療方針やコンセプトをしっかり固めていくことが重要です。ここが定まっていないと、開業準備の途中で課題や迷いが生じた場合に立ち返るポイントを失ってしまいます。
どんな患者層をターゲットにしていくのか、どのようにドクターの得意分野を活かしていくのか、そういった諸々がクリニックの土台になっていきます。
次に、診療方針やコンセプトに基づいて事業計画をつくり込んでいきます。ポイントは実現性の高い計画を立てることで、決して無理をしないことです。特に脳神経外科は初期投資をかけようと思えばいくらでもかけられるので、後になって資金がまわらなくなるような事態に陥ることは絶対に避けなければなりません。できればこの段階で、開業コンサルなどの専門家に相談することをおすすめします。
設備に関しては、脳神経外科の場合は数よりもひとつひとつの購入価格が後になって響いてきますので、初期導入時の価格交渉が非常に重要です。特に高額な医療機器は必ず相見積もりを取り、一般的な相場を確認した上で慎重に導入を決めましょう。
内装に関しては、脳神経外科の患者さんに特有の症状を考慮して院内の動線や照明といった内装を検討していく必要があります。
クリニックのオープンが近づいたら、スタッフの募集やホームページの準備などに取りかかります。リハビリテーションを行なう場合はセラピストの採用も必要ですが、最初から多くのスタッフを採用する必要はなく、患者さんの増え方を見ながらでも十分です。
また、開業に際しては行政へのさまざまな申請、届出が必要です。専門的な知識も必要になるため、こういった作業は経験豊富な開業コンサルタントに任せたほうが無難です。申請の不手際で開業スケジュールが遅れるような事態は避けなければなりません。
待ちに待った開業、さまざまなハードルを乗り越えてたどり着いたその日から、ドクターにとっては経営者としての人生も始まります。
医療機関の売上である診療報酬は2カ月後の入金になるため、開業当初は収入が患者さんの自己負担金しかありません。そして脳神経外科はランニングコストも高めなので、運転資金に余裕を持って開業を迎えることが大切です。