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北海道で小児科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、小児科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
近年は新興住宅地の造成やマンションの建て替えなどによって若年ファミリーも増えており、北海道内でもエリアによっては子どもが増えているところがみられます。そこには必ず小児科クリニックのニーズがあります。
開業にあたっては、ドクターの専門性を活かした診療体制の強化を目指すパターンや、親御さんの良き相談相手になるなどファミリークリニック要素の強いクリニックを目指すパターン、もしくはその両方の複合体という開業形態も考えられます。いずれにしても、小児科クリニックは開業前から地域の期待の声が多く寄せられることが一般的で、オープン前の見学会も盛況だったという話もよく聞きます。順調に開業できれば、経営が早期に軌道に乗りやすい診療科だといえるでしょう。
小児科クリニックを開業するデメリットというよりも、これは宿命といったほうがいいかもしれませんが、少子高齢化の問題を避けて通ることはできません。間違いなく小児科の患者数は全国的に減少していきます。開業の際には長期的な事業計画を立てますが、その際には開業予定地周辺の人口動態などをしっかり確認し将来的な潜在患者数の推移を把握しておかなければなりません。見通しが甘いと、いずれクリニックの継続は難しくなってしまうでしょう。
小児科クリニックが成功する大きなポイントは、やはり立地です。小児科の患者さんは親御さんが付き添うケースがほとんどですが、子どもが病気になったときの親御さんの心理を思うと、「早く診てもらいたい」という気持ちでいっぱいになるはずです。そのため、駅周辺などの一等地よりもマンションや住宅が多いエリアでの開業がおすすめです。
また、自家用車や自転車でお子さんを連れてくることも考慮して、十分な駐車場や駐輪スペースの確保も重要な要素です。特に車社会の北海道においては必須条件ともいえるでしょう。
成功するポイントが立地なら、同じように失敗のポイントも立地だといえます。小学校や幼稚園などが多いエリアを狙って開業するのは立地選びとして間違ってはいませんが、競合が多いのであれば話は別です。小児科は親御さんが気に入ってくれれば兄弟姉妹も同じクリニックに通院しますので、開業予定地のエリアが既存のクリニックで飽和状態なら、そこに切り込んでいくのは難しいかもしれません。
徹底したマーケティングを行なわずに開業して失敗するケースの原因は、そういったところにもあるようです。
広大な面積ゆえに人口格差・医療格差が非常に顕著な北海道で小児科クリニックの開業を検討する場合、もっとも頭を悩ませるのは「どこで開業するか」でしょう。患者数確保の面から考えると、診療圏の出生率が重要な指標のひとつになります。
北海道は自治体によって高齢化率・転出入率だけではなく、子育て施策への力の入れ方にも大きな差があります。また、小児科クリニックの誘致に積極的な自治体では、開業に際して多額の補助金が支給されるケースもあるようです。自己資金に不安がある場合や、いわゆる「落下傘開業」を検討している場合などには非常に有利な条件となり得ます。何より、行政が応援してくれるのはクリニックにとって心強いことです。このような情報を残さずキャッチした上で、慎重に開業予定地を絞り込んでいくべきでしょう。
とはいっても、エリアごと、自治体ごとに異なる諸条件に関してドクターだけで情報を集めるのは無理があります。ここはやはり、北海道ならではの事情に通じている経験豊富な開業コンサルタントの出番です。特に小児科クリニックの開業は事前の診療圏調査が重要になるため、専門的な視点からアドバイスを受けつつ開業予定地を絞り込んでいきましょう。
北海道には約2,700のクリニックが存在し、うち約520が小児科系クリニックです(2021年11月現在)。人口10万人あたりの小児科系クリニックは全国平均の17.16施設に比較して10.05施設と、北海道は不足傾向にあります。
ただし、この数字はあくまでも北海道全体の平均値です。特に都市部では競合先が多いエリアも存在するので、開業予定地の決定には慎重を期すべきです。
子どもの病気には季節変動がありますので、クリニックのスタートダッシュを成功させるためには開業のタイミングを慎重に図る必要があります。予防注射の時期なども影響してくるでしょう。しかし、それ以上に大切なのは、開業するドクターが元の勤務先を円満に退職できるタイミングを見誤らないことかもしれません。 小児科クリニックの開業を検討されているなら、患者さんや親御さんからの信頼も厚いドクターだと思います。そうなると、独立開業後のクリニックに移ってこられる患者さんも多いでしょう。それは見方によっては、元の勤務先から患者さんを奪うことと同じです。
将来的な医療連携なども考えると、元の勤務先とは良好な関係を保っておくべきです。それを踏まえた退職、そして開業のタイミングを検討しましょう。
小児科は、人口密集地や学校、幼稚園が多いエリア、ファミリー層に人気の住宅地などでは当然ながら競合先が多くなります。とはいっても、競合先が少ないエリアは子どもの数も少ないということですから、エリアマーケティングは相当慎重に行なわなければなりません。その際には、近隣エリアの将来的な年齢構成も参考にすべきです。
また、小児科は他の診療科よりも「口コミ」が経営を左右する傾向にあります。お母さん同士のネットワークにおいては評判があっという間に広がりますし、インターネット上の口コミサイトなどでも同様です。逆にそういったツールを上手に利用して集患につなげるのもありでしょう。
一般的な小児科クリニックにおけるひと月あたりの平均的な診療報酬は、約800万円程度だと考えられます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が問題になりはじめた2020年12月より、小児科外来の診療報酬において感染予防対策に対する評価がなされています。
小児科のかかりつけ医機能も定められるなど、昨今の流れでは小児科の診療報酬は若干ながらも増加傾向にあるようです。
小児科クリニックの開業資金は、その規模や診療内容などによって大きく変わります。設備面では新生児の受け入れの有無や、外科系ないし耳鼻科系の診療の有無といった視点の検討も必要になります。予約システムの導入やキッズルーム、授乳スペースの設置なども初期投資額に関わってくるでしょう。とはいえ、基本的に大型の医療機器などは必要ないため、小児科クリニックの場合はそれほど高額な初期投資にはなりません。一般的には不動産や機器その他を含めて3,000~4,000万円程度だと思われます。
また、小児科の開業医の平均年収は3,000万円程度といわれています。子どもは成人よりも受診頻度が高くなるため、成人が受診する診療科よりも収入が多くなる傾向にあります。とはいえ、前述のとおり少子化の影響は確実に訪れます。思うような収入が得られない可能性もあることを覚えておきましょう。
小児科クリニックは初期投資が比較的少なく済むとはいえ、開業当初や患者さんが少ない時期にはまとまった運転資金が必要です。その場合、金融機関に相談するのも一手ですが、北海道医師会に加入していれば「特約融資制度」の利用も可能です。北海道医師会は金融機関とも連携しているので、有利な条件で資金を調達できるかもしれません。
小児科領域では、日本小児科学会が認定する小児科専門医がメジャーだといえそうです。また、近年はお子さんのアレルギーに悩む親御さんも多いので、アレルギー専門医を取得して広告するのも集患につながるアピールになるでしょう。
まずは経営理念やクリニックのコンセプト、開業時期や場所といった開業プランの基本となるものを固めていきます。小児科クリニックはエリアによっては競合先も多いので、他院との差別化も重要なポイントになります。
小児科は親御さんがベビーカーを押して来院することが多いので、テナント開業であれば1階もしくはエレベーターが広い物件がベターです。駐車場が広く、車が寄せられればなおいいでしょう。ただし、風紀的に問題のあるテナントとの同居は避けたいところです。
基本的に親御さんが付き添いで来院するので、完全予約制ではない限り、待合室は広くする必要があります。キッズスペースを設けるのであれば感染対策をしっかりしなければなりませんし、最近はあえてキッズスペースを設けないケースもみられます。
診察室や処置室も親御さんが同伴するので、余裕のあるスペースや動線を確保することが大切です。
小児科は若いお母さんのネットワークやSNSなどで評判になりやすいので、子どもが好きな人、接遇力の高い人を採用したいところです。 内装工事が完了したら写真撮影を行ない、ホームページの準備にも取りかかりましょう。特に小児科は、ホームページの充実が必須です。
また、開業にあたっては行政に対するさまざまな申請が必要です。そこに不備があると開業スケジュールに影響する可能性もあります。ドクターが独力で処理するのは難しいので、開業コンサルタントに任せたほうが無難だといえます。
待ちに待った新クリニックのオープン、すぐに多くの患者さんが来てくれればよいですが、なかなかそうはいきません。 診療報酬の入金は2カ月後からになりますので、その分の運転資金を確保して財務的な余裕を持っておくことが重要です。