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北海道で泌尿器科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、泌尿器科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
厚生労働省の調査によると、全国の泌尿器科医の数は全医師数の2.4%、約7,400人です。その中でクリニック勤務医師は約2,000人となっており、他の診療科に比べて少なくなっています。したがって、泌尿器科クリニックの開業は競合相手が少ないと考えられます。
また、中高年の世代から腎臓や泌尿器の病気が急増するため、高齢化を迎えている日本ではニーズが増えているといえるでしょう。
泌尿器科の病気は、症状を自覚していても恥ずかしくて受診をためらう人が多いものです。したがって、泌尿器科クリニックを開業してもすぐに多くの患者さんが来るということはまずありません。
むしろ、しばらくは患者さんが来ない日が続くことを覚悟しなければなりません。
泌尿器科を受診する患者さんは高齢者が多く、中でも前立腺肥大症や尿失禁など高齢者特有の症状を訴える人が増えています。北海道であれば旧新興住宅街など、高齢化が進んでいる地域からアクセスしやすい立地で泌尿器科クリニックを開業すれば、大きなニーズが見込めるでしょう。地域住民から「かかりつけ医」として信頼してもらうには、何より患者さんの話をよく聞き、コミュニケーション第一の診療を行なうことが大切です。
また、泌尿器科クリニックの宣伝は地域住民が集まる商店街や、介護施設への訪問アピールなども効果的です。
前述のとおり、泌尿器科クリニックは受診するのが恥ずかしいと感じる人が多く、入りにくいといわれます。また、受診したとしても、他の患者さんの目が気になって落ち着かないということもあるでしょう。こうした事情に配慮せず、プライバシーを保てない外観や待合室、動線で開業してしまうと、患者さんがつかないクリニックになってしまう可能性が大きいため注意が必要です。
広大な面積を誇る北海道は大自然の宝庫で移住者も多いのですが、一方で医療の視点からみると地域格差が年々進んでおり、その背景には人口の一極集中化傾向があります。
札幌市など医療資源が集中している都市部では、クリニックの激戦区となっているエリアが多くみられます。ドクターの専門性と地域における潜在患者のニーズがマッチしなければ、開業しても苦戦を強いられるでしょう。こうした状況は人工透析を実施するしないに関わらず、泌尿器科でも同様と思われます。
では都市部を離れて医療資源の少ないエリアで開業するのが得策かといえば、決してそうとは限りません。人口の一極集中化は地方の人口減少と表裏一体のため、将来的な患者確保の面でどうしても不安が残ります。
北海道の特性は医療資源や人口分布だけではなく、寒冷地ゆえに「積雪」という問題があります。患者さんや同伴者のアクセス性も踏まえると、開業候補地がなかなか決まらないのも無理はないといえます。
こうした諸々の状況を考慮しながら開業候補地を絞り込んでいく作業は、ドクターだけでは難しいかもしれません。開業地の選択ミスは取り返しがつきませんから、地場の状況を良く知る経験豊富な開業コンサルタントの力を借りるのが無難ではないでしょうか。
北海道には約60の泌尿器科クリニックが存在しますが(2022年11月現在)、その開業地の大半は一定数以上の人口を有する自治体です。 また、泌尿器科を標榜する病院や腎臓内科を標榜するクリニックがあることを考慮すると、競合先と捉えるべき実質の開業件数はもっと多くなると考えたほうがいいでしょう。
診療科によって、クリニックの需要には季節変動があります。
医師が大学医局を離れる時期の関係もあって、春先に開業するクリニックは多いようです。しかし、春先は温かくなって体調も安定する時期です。クリニックを開業するタイミングとしては一概にいいとは言えなさそうです。
泌尿器科の場合、頻尿などの症状は寒くなる時期に気になり始めることが多いでしょう。そう考えると、秋口から冬にかけての季節が、新たに開業する泌尿器科クリニックにとって多くの初診患者さんを見込めるタイミングかもしれません。
ビルクリニックなどの賃貸物件の場合、泌尿器科の開業資金は約7,000万円から1億円程度が目安です。ただし、北海道の場合は札幌圏とそれ以外では賃料に大きく差があります。
泌尿器科のような専門診療科クリニックの場合は、前述のとおり患者さんが集まるまで時間がかかります。少なくとも半年以上の運転資金も初期投資と併せて見込んでおいたほうがいいでしょう。
泌尿器科クリニックの平均年収は約2,500万円程度といわれています。統計データによると、開業医全体の平均年収は約2,300~2,400万円程度ですので、平均をやや上回るといったところでしょうか。ただし、地域住民のニーズに応える医療を継続できれば、それ以上の年収も期待できる診療科です。
クリニックの資金調達に関していえば、どちらかというと北海道は都市銀行よりも地方銀行や信用金庫のほうがフットワークも軽く、融資に積極的な印象があります。
ただ、開業の際の初期投資計画や事業計画といった資金調達に必要な書類を医師個人が作成するのは難しいと思われます。開業コンサルタントなどの専門業者に相談したほうがスムーズに進むでしょう。
泌尿器科領域では、日本泌尿器科学会が認定する泌尿器科専門医がメジャーな資格といえるでしょう。こちらの資格は広告も可能なので、開業時までに取得しておけば患者さんへのアピールに役立ちそうです。
どの診療科の開業であっても変わらないのは、まず開業時期、そして経営理念や事業コンセプトから考え始めることです。
物件の選定は、希望する開業時期から逆算して早めに始めましょう。テナント開業であれば、少なくとも1年程度の準備期間が必要です。開業時期が決まったら、併せて新クリニックの診療方針や経営理念、事業コンセプトなどに基づいた開業プランを組み立てていきます。
物件が決まれば、次は必要資金の計算など具体的なプランの検証を行なっていきます。資金の規模に応じて調達の手段も検討しなければなりません。
内装のプランニングや改修工事、医療機器の設置などに要する時間を考えると、少なくとも開業の半年前までに物件の設定や資金調達のめどを立てなければ、スケジュール的にかなり厳しくなります。
地域の医師会や厚生局などへの事前相談は、この時期に済ませておきましょう。必要に応じて開業コンサルタントに相談するのも一手です。
内装レイアウトを決定する前に、導入する設備や医療機器の選定を固めておきましょう。泌尿器科の場合は膀胱鏡や全自動尿分析装置、トイレタイプの尿流量測定装置などを導入するかどうかで、内装の設計や動線が大きく変わる可能性があります。電子カルテの導入も、場合によっては内装レイアウトに影響するかもしれません。
こうした検討に際しては、できればクリニックの工事実績を多数持つ専門業者を選び、綿密な打合せを行ないたいところです。
スタッフの募集や採用面接などは、開業の3カ月くらい前から始めましょう。ハローワークや募集広告、求人サイトなどの手段がありますが、職種によって採用しやすさに差があるようです。また、患者さんへのアピールのためにホームページは必ず作成しておきましょう。求人の効果も違います。
クリニックの開業には所轄の保健所や厚生局などでの行政手続きが必要ですが、これに不手際があると大変です。予定していた開業ができなくなってしまうので、申請スケジュールには十分に留意しましょう。
すぐに多くの患者さんが来てくれればありがたいのですが、泌尿器科の新規開業は他の診療科に比べてスロースタートな一面があります。それでも日々の診療を丁寧かつ誠実に行なっていけば、必ずや地域住民の信頼を得られ、多くの患者さんが訪れるクリニックになるはずです。