公開日: |更新日:
クリニックの開業形態のうち、ビルの一角を利用して開業する形態のこと。ビルの一室を使う場合やワンフロアを使う場合、また複数フロアを使う場合もあります。
ビル内に開業するため、都市部や駅前、オフィス街など人が集まりやすい立地条件になる場合が多く、部屋を借りるためレイアウトはある程度決まっているため、内装を変えるなど手を加える必要があります。
開業のための物件を探す場合、多くの候補から選ぶことができ、人口が多いエリアや駅の近くなど好立地の条件で物件を確保しやすいです。初期投資は少なめで済み、金融機関の融資も得やすいです。もし移転が必要になった場合も移動しやすく、撤去も行いやすいです。
ビル内のため、スペースは限られており、レイアウトも自由度は低くなります。患者が多くなった場合に待合室を広くするなどスペースの確保が難しくなります。同様に、職員が増えると休憩室なども確保しづらくなります。また部屋数を多くしようとしても、思うようにいきづらくなります。
ビル診開業する際には、いくつか注意するべき点があります。ここでは、その1つ1つについて解説していきます。
ビルの一室を賃貸する場合、戸建てのクリニックに比べればイニシャルコストは抑えられますが、毎月の家賃支払いがあるため、結局ランニングコストがかかってしまいます。また広告料の掲出料も、住宅地に比べれば割高になる傾向があるので注意が必要です。
ビル診の家賃は、目安として医業収入の6~8%と言われています。例えば、医業収入が500万円の場合、家賃30~40万円程度であれば、経営も安定して持続させられるでしょう。しかし、これはあくまでも安定した収益が見込める目安です。開業直後はなかなか患者も集まらず、収入も見込みにくくなり、借入金の返済に追われることもあるかもしれません。
もし、医業収入と家賃のバランスが悪く、経営も難しい場合は、家主と家賃値下げの交渉をしてみるのも1つの方法です。意外と家賃が下がる場合もあるので、やってみる価値はあります。
ビル診開業すると、たとえ駅前などの好立地のビルであっても、周囲の環境により患者の入り具合が左右される場合があります。例えば学習塾が上の階にあると、騒ぐ子供の声が聞こえてきたり、飲食する子供に不快感を持つ患者も居るかもしれません。それにより、クリニックの患者が減ることもあるかもしれません。その他、クリニックにふさわしくない、消費者金融や夜のお店、パチンコ店などがあるビルは避けた方が良いです。
クリニックのイメージを壊さない店舗などとしては、整体院、エステ、ヨガスタジオなどの美容・健康産業が良いので、そういったビルを探すようにしましょう。
戸建てのクリニックの場合は、見えるところに自由に看板を立てられますが、ビル診開業の場合はそうはいきません。市町村の条例や、ビル独自のルールによって、広告・宣伝に制限があります。ホームページを作成したりチラシを配布するなどしてカバーはできますが、看板が作れないのは影響が大きいです。賃貸契約する前に、必ず広告の制限がないか確認をしましょう。
立地が良く広告・看板の制限もないなど、条件が良さそうでも、賃貸契約する前に、外観や内装、ビルの設備などを確認するようにしましょう。例えば、
などの事態が発生すると、予想以上の費用がかかってしまうので、必ず確認のうえ、条件を満たさなければ、追加費用の見積もりを取る必要があります。
ビル診開業では、契約期間にも注意が必要です。特に定期借家契約では、契約期間が10年以下に設定されていることが多いです。契約満了になり強制退去となると、内装工事や医療機器等の設備資金で法定耐用年数を満たさず、減価償却をしきれなくなる場合があります。
また、定期借家契約のもう1つの懸念材料として、借り主の都合で中途解約すると、残存期間の賃料を全額支払う必要があるということです。患者が集まらないからと簡単に移転できず、また廃業する場合も余計なコストがかかってしまいます。こうしたことから、契約期間の融通が効かない定期借家契約は極力避けるべきです。