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休みが少ない

「休みが少ない」というのは勤務医が抱える代表的な悩みのひとつです。特に医師が不足している医療機関では1人で多くの患者さんを担当するケースもあり、過重労働になりがちです。さらに土日も当直やオンコール対応に追われるとなると、心身ともに疲れ果ててしまうことでしょう。

これでは、もっとまともな休みが欲しいと転職や独立開業を考えるのも無理はありません。

医師の休日数はどれぐらい?

目下の「働き方改革」推進によって医師の労働時間の長さが問題となっていますが、つまりは時間外勤務の多さを示しており、休日も十分ではないのは明らかです。

m3.comが2012年10月に公開した調査結果によると、ひと月の休日は6日以下という医師が全体の約60%に上り、さらに10%以上の医師がひと月の休日が2日以下ということでした。医師の少ない医療機関であれば、1カ月以上休みなしで働くということも珍しくないようです。

当直の翌日はそのまま日勤に入ることも当たり前で、ゆっくり過ごせる休日はほとんどないと言ってもいいでしょう。

参照元:m3.com「医療維新」https://www.m3.com/news/open/iryoishin/159851

診療科ごとの休みの取りやすさの違い

「医師は休みが少ない」といっても、そこは診療科によって状況が変わります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、年間7日以上の有給休暇を取得している医師が多い診療科は産科・産婦人科、精神科、次いで麻酔科のようです。ただ、これらの診療科では有給休暇の取得率が高いとはいっても中央値はそれほどでもありません。それぞれの医療機関の事情に大きく影響されるのがその理由です。

例を挙げると、大学病院や医療法人では有給休暇の取得率が比較的高めですが、国公立病院では逆に低い傾向にあります。

参照元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」【PDF】https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf

研修医の休日数はどれぐらい?

一般的に研修医の労働時間は勤務医ほど長くなく、休日もきちんと決まっています。実際に研修医を受け入れている医療機関では、週に1日は休日を設定しているケースが多いようです。しかし、医療機関や診療科によっては研修医も勤務医並みに働かなければならないこともあります。中には週に2回の当直、休日も月に1回がやっと‥というケースもみられます。

研修医は仕事に対するモチベーションが高いので、激務でも気力で乗り越えようとする傾向があります。その結果、心身のバランスを崩してドロップアウトしてしまう研修医も少なくないのです。

「休みが少ない」と悩む医師が多い理由

高齢化に伴い患者数が増えている

医師が多忙で休みを取れない理由のひとつに患者数の増加があり、その背景には超高齢化社会という問題が存在します。高齢者が増えると病気にかかりやすい人も増えるというシンプルな構造がそこにあります。

高齢者が多い病院は外来が混雑する傾向にあり、外来患者さんが多いとそれだけ診療時間も長引きます。そうなると入院患者さんの対応やその他の業務も後ろ倒しになり、結果として労働時間が増えて休日にしわ寄せがきてしまうのです。

医師が不足している

医師不足もわが国が抱えている深刻な問題です。前述のとおり患者数が増えている以上、医師1人あたりの業務量は必然的に増え続けることになります。

激務のあまり体調を崩す医師は後を絶たず、中には心身のバランスに異常を来たして退職する医師もいます。結果として医師不足がさらに進むという負のスパイラルに陥るわけです。

医師不足を解消するには抜本的な対策が不可欠です。そうしなければ医師の勤務環境の改善は困難だといえるでしょう。

緊急対応の可能性があり、気が休まらない

担当患者さんの容態が急変したり、緊急の手術が必要になったりすると、たとえ休日でも医師は病院に駆けつけなければなりません。そのため、どこにいてもすぐ出勤できるように心の準備をしておく必要があります。とてもではありませんが、これでは気が休まらないでしょう。

建前上は休日だとしても、仕事を気にせず落ち着いてプライベートな時間を過ごすことはほとんどできません。ちょっとした旅行に行くのも難しいというのが現状なのです。

症例研究や論文作成の手伝い、副業などで休みが潰れてしまう

勤務医の平日は診療だけで終わってしまうことが多いので、休日を症例研究に充てている医師は多くいます。また、大学病院の勤務医では休日に教授の論文作成を手伝っているというケースもあります。

まだ十分な収入を得られない若手医師などは、週末に当直などのアルバイトをしなければならないこともあるでしょう。学会活動や執筆、講演などに休日の時間を費やす医師も少なくありません。

貴重な休日でも心身を休めることなく過ごしている医師は非常に多いのです。

休みを取りやすい医師の働き方・職場

開業医になる

自分の裁量で自由に休日を決めたいのであれば、自分で開業するのがいちばんの方法です。土日を休診にして週休2日にしてもかまいませんし、診療時間も自由に決められます。

しかし、開業とは自営業であり自分自身が経営者になることを意味します。もちろん有給休暇や残業手当といった概念はないことを覚えておきましょう。

もちろん多く診療するほど収入が上がりますが、逆にいえば休み過ぎると経営が苦しくなるということです。そのあたりのバランスには注意しなければなりません。

無床クリニックで働く

無床クリニックであれば入院患者さんがいないので、基本的に当直やオンコール対応などはありません。外来が完全予約制なら残業も発生しないでしょう。

ただし、近年は土日も稼働していたり急患に対応したりしているクリニックも増えていますし、地域によっては輪番制の夜間休日当番医を担当しなければならないなど、必ずしも定期的な休日を確保できるわけではありません。

いずれにしても在籍している医師が多ければ休みを取りやすいので、事前に人員体制などについて確認しておくべきです。

産業医として働く

産業医は大企業に雇用が義務付けられている医師で、社員の健康管理や職場の衛生管理が主な業務です。産業医の休日は企業の休日と同じなので、通常は土日が休日です。オンコール対応などもないのでしっかり休めるでしょう。

企業との契約内容にもよりますが、産業医が毎日出社するというケースは少ないので、勤務医に比べると身体的な負担はずいぶん軽減されるはずです。その代わり、年収は勤務医よりも大幅に下がることを覚悟しなければなりません。

製薬会社でメディカルドクターとして働く

製薬会社に所属し、新薬開発や治験などに携わる医師を「メディカルドクター」といいます。

メディカルドクターの多くは製薬会社、つまり大企業の社員として勤務することになるため、福利厚生の充実はもちろん、場合によってはフルリモート勤務も可能です。通勤の負担がなくなるので、育児や介護と仕事を両立したいという医師には人気の職種です。

ただし、メディカルドクターは幅広い知識やスキルを求められます。大量の論文を読み込む語学力やプレゼンテーションスキルなども欠かせません。

保健所などで公務員として働く

医師の資格を活かして公務員として働くという道もあります。

保健所などで働く公衆衛生医師は、地域住民の健康促進や医療の課題解決などを通じて公衆衛生の向上を図ることが主な仕事です。また、医系技官は医師の専門知識に基づいて保健医療に関する政策の企画立案などを手がけます。刑務所や少年院に併設されている診療所で収容者の健康管理に従事する矯正医官という職種もあります。

公務員だけあって福利厚生も充実しており、何より休みが取りやすいというメリットがあります。

一般企業で医師資格を活かしながら働く

近年は医療系ウェブサイトの制作、医療系システム・アプリなどの開発を手がける企業に勤務する医師も増えており、中には医師自身が起業するケースもあります。

IT系の企業ならテレワークやフレックスタイム制を導入しているところも多く、休みも自由になりやすいと思われます。ただ、当然ながら収入は勤務医に遠く及ばないと考えたほうがいいでしょう。起業する場合はゼロからのスタートなので、収入が不安定になることも覚悟すべきです。

医師のお休みの日の過ごし方は?

医師がお休みの日をどう過ごすかは大きく2つ、仕事の延長線と考えるか、もしくは割り切ってプライベートを重視するかに分かれるのではないかと思われます。

休日でも担当する入院患者さんの様子を見に行ったり、通常勤務中にはできない症例研究や論文執筆、学会活動に時間を費やしたりする医師も多いでしょう。特にオンコールに備えて気が休まらない場合にはこのように過ごすことが多いようです。

プライベートを重視するなら趣味に没頭したり、家族サービスに勤しんだりと、そのあたりは一般的なサラリーマンと変わりません。しかし、勤務医の場合は担当患者さんがいるので連休が取りにくいという難点があります。

医師の休日に関するまとめ

医師は長時間労働になりやすく、休みも取りにくいということがおわかりいただけたと思います。そして、その状況を打破するための選択肢もお伝えしてきたとおりです。

特に勤務医は激務が当たり前のように考えられていますが、体調を崩したり心身のバランスを壊したりしては元も子もありません。ワークライフバランスを保ちながら医師としてのキャリアを積んでいくことが大切です。

休みが取れずに苦しんでいるのであれば、開業して理想の職場を自ら生み出すこともひとつの手段です。決して簡単なことではないにしても、検討に値することは間違いないでしょう。