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医師として仕事をする以上、患者さんはもちろん、同僚の医師や看護師、医療スタッフなど多くの人と関わらなければなりません。医師も人間ですから、時にはコミュニケーションがうまくいかず、相手にストレスを感じることがあります。
人間関係のストレスが仕事に影響してしまうと、治療の現場では取り返しのつかないことにもなりかねません。ここでは医師を取り巻く人間関係をさまざまな角度からみていきます。
大学病院などの医局は上下関係が明確で、派閥争いも起こりやすいのでストレスを感じる勤務医は多くいます。そのような中では医師としてのスキルだけで出世するのは難しく、周囲への気配りや上役への根回しなど、立ち回りや人心掌握にも長けていなければなりません。人間関係に悩むあまり、患者さんと向き合う以前に疲れ切ってしまう医師もいるほどです。
そうした面倒ごとのストレスから解放されるには、医局を離れることです。そうして新たなキャリアを積むために、今のうちに専門医としてのスキルを身につけておきましょう。人間関係に振り回されずに、医師としての市場価値を高める努力を続けることが大切です。
医局人事などによる異動の多さも医師の人間関係に大きく影響します。
診療科が同じでも、職場によって雰囲気も常識も異なるのが当然です。前の職場と同じようなスタンスが通用するとは限りません。腕に覚えがあるベテランドクターでも、新たな職場では新人だと自覚しましょう。スタッフとしっかりコミュニケーションを取って、良好な人間関係を構築していかなければなりません。
もし前の職場で人間関係にストレスを感じていたのなら、人事異動はその悩みを解消する絶好の機会ともなるでしょう。
医療の現場における人間関係の複雑さは、さまざまな専門スタッフが集まっていることにも関係しています。いわゆる「チーム医療」には多職種との良好な人間関係が不可欠なので、日頃からメンバーとしっかりコミュニケーションを取っておくことが大切です。
医師だからといって、他のメンバーに「上から目線」のような態度を取るのはNGです。それぞれの職種によって見えている部分が違うことを忘れず、相手を尊重する気持ちを持って接することを心得ておきましょう。
多忙な医療の現場では、メンバーとゆっくり話す機会も少ないので関係も事務的になりがちです。そんなときこそ、しっかり挨拶をすることを心がけましょう。相手の顔をしっかり見て挨拶することが、良好なコミュニケーションにつながるきっかけになります。
もし相手が挨拶を返してくれなくても、自分のほうを見返してくれなくても、自分自身が積極的にコミュニケーションを取ろうとしていると意識することが大切です。相手の反応を期待しすぎてはいけません。
少しずつ自然に挨拶を交わせるようになれば、お互いの顔も見られるようになります。きっと良好な人間関係を築きやすくなるはずです。
感謝を伝えることはとても大切です。相手の職種に関わらず、仕事を頼んだスタッフには必ず「ありがとう」のひと言を伝えましょう。
何かをやってもらっても「仕事なんだから当たり前」と考えてしまうと、良好な人間関係を築くための絶好のチャンスを逃してしまいます。もちろん仕事ですから大げさにお礼をする必要はありませんが、日頃からのねぎらいを込めて、ひと言でもいいので声をかけることです。
そのような小さくても温かいコミュニケーションの繰り返しが、いずれ大きな信頼関係につながっていくのです。挨拶と同様、感謝を伝えることはコミュニケーションの入り口になります。
もし上役の医師との人間関係に悩んでいるなら、こまめに「報連相」を行なってコミュニケーションのきっかけをつくるのも一手です。苦手なタイプの上役とは雑談のきっかけもつかみにくいものですが、仕事上の報告なら名目も立ちますし、相談もしやすいでしょう。
日頃からこまめに「報連相」を行なうことで、上役の医師は自分の状況を理解してくれますし、何より信頼されるようになります。仕事上のアドバイスを受けられたり、トラブルが起きたときにサポートしてくれたりするかもしれません。もちろんその際にはしっかり感謝の気持ちを伝えて、より良好なコミュニケーションを図りましょう。
医師が自分一人で仕事を抱え込んでしまうと精神的にも身体的にも疲弊してしまいますから、できるだけ他職種へのタスクシフト・タスクシェアを進めていきたいところです。そのためにも良好な人間関係は欠かせません。普段からしっかりコミュニケーションを取って、他職種との信頼関係を築いておくべきです。それがお互いを助け合う組織風土を生み、結果として医療の質の向上にもつながります。
良好な人間関係はチーム医療の基本です。チームワークを重視し、自ら進んで他職種との連携に力を入れましょう。
先ほど「報連相」の大切さもお伝えしましたが、やはり仕事でミスしないことが上司との信頼関係において重要なポイントです。
たとえば、学会で出張するため同僚の医師に担当患者さんを任せることにしたのを、患者さん本人に伝え忘れてしまい、病院にクレームが入ったとしましょう。当たり前ですが、患者さんの信頼を損ねてしまったことを上司から注意されるはずです。上司は責任ある立場ですから、こういうミスを嫌います。上司との良好な人間関係を維持するためには、何より仕事をしっかりこなすことです。
基本的なことですが、まずはなるべく話をするように心がけましょう。自分から話すのが苦手な人もいるかもしれませんが、そこで受け身にならず、自分から話すよう意識することです。自分の診療科だけではなく、他の診療科や部門のスタッフにも普段から話しかけておけば、仕事上の連携もスムーズにいくはずです。
その際に大切なのは「明るく」「丁寧に」話すことです。同じ内容の話でも印象がまったく変わります。笑顔を意識して、相手に伝わりにくい言葉を使わないように気をつけながらコミュニケーションを図りましょう。
看護師やスタッフとの人間関係を構築するためには、相手をリスペクトしつつ丁寧なコミュニケーションを図ることが重要です。特に看護師の働きやすさは医師の対応次第といっても過言ではありません。
看護師は医師をサポートする立場とみられる向きもあり、医師との人間関係の構築が難しいと思われがちです。パワーバランスに注意しなければ、ちょっと注意しただけでもパワハラと受け止められかねません。
また、看護師同士の人間関係も仕事に大きく影響します。医師は看護師の上司ではないとはいえ、働きやすい雰囲気づくりを意識したコミュニケーションも大切です。
これも当たり前の話ですが、患者さんとの人間関係の基本は丁寧に接することです。医師と患者さんとのトラブルケースはさまざまですが、丁寧さを欠いたコミュニケーションが原因になっていることは非常に多いと思われます。
患者さんとの人間関係に悩むかどうかは医師の資質によるところも大きいのですが、患者さんにしてみれば「優しい先生であってほしい」と願うのは当然です。多忙で一人ひとりの患者さんにゆっくり向き合う時間がないかもしれませんが、それは患者さんには関係のないことです。医師だからこそ、患者さんへの接し方を真摯に考えていく必要があります。
勤務医は一般的な会社勤めのサラリーマンと同様、一緒に働く同僚を選ぶことはできません。良好な人間関係の職場で働けるに越したことはありませんが、そうではない場合、人間関係のストレスを抱えながら働き続けることになります。思い切って転職したとしても、同じことを繰り返さないとも限りません。
人間関係に悩まされたくないのであれば、開業医の道を選択するのもひとつの手段です。開業医は自身の判断でスタッフを採用するので、相性が良さそうな人材を選べます。勤務医時代よりも小さな組織になるので目も行き届き、スタッフに声もかけやすいので良好な人間関係を構築できるでしょう。
医療の現場を支えているのは専門職の集団であり、一人ひとりが自分の仕事にプライドを持っています。当然、仕事を進めていく上で意見がぶつかることも起こります。人間関係が良好ならお互いに歩み寄ることもできますが、そうでなければ対立構造に陥ることもあります。
常日頃からコミュニケーションを取ることを意識して、少しでも人間関係のストレスを減らすような努力が必要です。