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北海道で内科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、内科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
今の時代の流れにおいて確実にいえるのは、日本が超高齢化社会に突入しているということです。そこでクリニックに求められるのは、病気の早期発見や健康維持に関するアドバイス、つまり「かかりつけ医」としての役割です。さまざまな病気を診てくれる内科であれば、高齢者の幅広いニーズにも応えられるため、安定した経営を期待できるでしょう。
幅広い需要がある内科ですが、内科だけを標榜していれば安心というわけではありません。特に大都市部では一般内科だけで生き残ることは困難です。医師に際立った専門性がない、在宅医療もやらない、そういったクリニックは遠からず経営が立ち行かなくなる可能性があります。
もし内科領域の専門医資格を持っていても、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科といった単科だけの標榜で開業するのはおすすめできません。なぜなら、たとえば風邪やインフルエンザは消化器内科では診てもらえないだろう、そう考える患者さんもいるからです。
成功のためのポイントのひとつは、必ず「内科」も標榜しておくことです。専門性があるドクターでも、開業時にまずは広く患者さんを集めるために内科を標榜することは、戦略上でも有利になるでしょう。
少子高齢化による人口減少が進めば、当然ながら通院医療の需要も減っていきます。特に北海道の人口分布は札幌圏の一極集中が止まらない傾向にあり、この問題は開業を検討する上で慎重に向き合うべきです。開業場所の選定ミスによる失敗は取り返しがつきません。
開業予定地から一定の範囲内に患者さんとなり得る人口がどのくらいあるのか、詳細な診療圏調査を行ない、自院の想定患者数を把握しておきましょう。
47都道府県の中でもっとも広い面積を誇る北海道、その広さは実に日本の総面積の約2割を占めるほど。そして、その広大さゆえに医療の地域格差が際立っています。
北海道は人口の一極化傾向に伴い、札幌市など都市部への医療資源の集中が顕著です。クリニックの激戦区となっているエリアも存在するため、ニーズが多い内科系クリニックであっても競合先が多かったり、ドクターの専門分野と地域住民のニーズがマッチしなかったりすると、開業しても苦戦を強いられる可能性は否定できません。
逆に、都市部を離れて医師の少ないエリアでの開業は地域住民からも行政からも歓迎されるでしょう。ただし、今後の人口推移の見込みを把握した上で事業計画を立てることが必須です。将来的な人口減少は患者数減少と同じです。
このように、人口の一極集中・広域分散という特徴を持つ北海道で開業を検討する場合、予定地がなかなか決まらないことが少なくありません。加えて、寒冷地ゆえの積雪という問題も出てきます。
メジャーな診療科である内科だからこそ、患者さんが通院しやすい立地はどこか、ニーズ的に新規開業の余地があるエリアはどこかを徹底的に検討することが重要です。しかし、それをドクターだけで判断するのは困難でしょう。地域医療に精通したプロの視点を持つ、経験豊富な開業コンサルのアドバイスを受けることも必要になってきます。
北海道には約2,700のクリニックが存在し、その半数以上となる約1,600が内科系クリニックです(2021年11月現在)。人口10万人あたりの内科系クリニック数は全国平均の44.81施設に比較して30.68施設と、北海道は不足傾向にあります。
ただし、このデータは北海道全体における数字のため、上記のとおり医療格差・人口格差が著しい北海道では内科系クリニックが飽和状態のエリアもあれば、地域住民のニーズを満たせていないエリアもあるでしょう。
これまで大学医局に所属していたドクターであれば、クリニックの開業時期は春先と秋口に集中するケースが多いようです。しかし、クリニックの需要には季節変動があります。内科の場合は、風邪やインフルエンザが流行する秋から冬、できれば医師会を通じてインフルエンザの予防接種を受託できるように9月から10月の開業を目指すと良いでしょう。
まず、需要に合わせたタイミングの開業はインパクトも大きく、地域での早期の認知度アップにつながるでしょう。そして開業時に初診中心の患者さんが多く来てくれれば、運転資金にも余裕が出てきます。
極論をいえば、自己資金はゼロでも開業は可能です。戸建て開業であれば、2,000万円程度は必要でしょう。しかし、しっかりした保証人がいたり、土地を所有したりしていれば自己資金ゼロでも開業できます。
初期投資と運転資金を合わせると、戸建て開業なら1億5,000万円、ビルクリニックなどのテナント開業であれば6,000万円から8,000万円がひとつの目安です。テナント開業で1億円はかけすぎです。開業コンサルタントに高額な初期投資を提案され、失敗に至るのはよくある話です。
内科クリニック開業医の平均年収は、統計データから推測すると約2,400万円程度です。中には5,000万円、1億円という高年収を得ているドクターもいます。
開業時もしくは開業間もない時期は、どうしても収益が不安定になります。その場合資金調達を検討しますが、その手段は民間の金融機関からの融資だけではありません。日本政策金融公庫の創業融資制度や、自治体が実施している中小企業向けの開業資金融資制度など、比較的低金利な融資制度を利用したほうが財務的に有利な場合があります。
内科領域には消化器、呼吸器、循環器、内分泌・糖尿病など、さまざまな専門医資格が存在しています。自身が理想とする内科クリニックの診療方針に合った専門医資格を取得しておくことは、ただでさえ多いライバルの内科系クリニックとの差別化戦略にもなります。開業時は広く患者さんを集めなければなりませんが、その時点からでも認知度を高めるためのプロモーションに役立つでしょう。
診療科に限らず、クリニック開業において最初に考えるべきことは開業時期、そして経営理念と事業コンセプトの想定です。
当然ながら開業には土地や物件の選定が必要で、新築の戸建て開業なら建設期間も考慮しなければなりません。一般的に戸建て開業は1年半程度、テナント開業は1年程度の準備期間が必要です。希望する開業時期に合わせて準備を進めていきましょう。
開業時期が決まったら、どのような診療方針にするのか、自身の得意領域などをもとに経営理念や事業コンセプトなど開業プランを検討していきます。
具体的な開業プランの検証のためには、実際に物件を探したり、必要資金を計算したりする必要があります。その金額に合わせて資金調達の手段も考えなければなりません。
実際に物件が決まっても、内装の検討や工事、医療機器の納入などに時間がかかります。そのため、物件選定や資金調達のめどは、どんなに遅くても半年前までに立っていなければ新規の開業は難しくなります。
地域の医師会や厚生局へのアプローチはこの段階で行なっておきましょう。また、必要に応じて開業コンサルタントに相談することも検討します。
無事に物件が決まれば、導入する設備や医療機器の選定を行ない、内装レイアウトなどを決定していきます。内装に関しては、できればクリニックの工事実績が豊富な業者に任せたいところです。
内装を決める際は、快適なスペース確保や動線のために、先に導入する設備や医療機器を選定すべきです。電子カルテを導入するのであれば、連動する医療機器も内装レイアウトに関わってくる場合があるので注意しましょう。
開業の3カ月前くらいからは、スタッフの募集や採用面接などを進めていきます。必要な職種に応じてハローワークや募集広告、求人サイトなどを利用して採用、随時研修などを行ないます。
また、内装が整って医療機器などの設置が済んだら、写真を撮影してホームページの作成に取りかかりましょう。クリニックの開業には所轄の保健所や厚生局にさまざまな届出が必要になります。こうした行政手続きに不手際があると、予定していた開業ができなくなってしまいます。申請スケジュールには十分に留意しなければなりません。
待ちに待った開業、すぐに多くの患者さんが来てくれれば医師にとって喜びもひとしおです。
しかし、成果である診療報酬の入金は2カ月後です。最初は無収入でも経営できるよう、資金に余裕を持っておくことが大切です。