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医療モールとは、内科や外科といった複数の診療科のクリニックや調剤薬局が、同じ地域内、敷地内、建物内に集合している施設の総称で、この施設内に開業することを医療モール開業と呼びます。
主に商業施設に多数の診療科のクリニックが集まっているので、駐車場も大きく、認知度も高いです。買い物のついでに立ち寄れるので、集患しやすいです。
地域にとってランドマークになることもあり、集患力が高いです。また、医療モールの建物は、クリニックが入ることを前提として設計されていることが多く、内装費を抑えられます。看板や駐車場、トイレなどをモール内で共用する場合は、その分だけ貸借面積が少なくなり、月々のランニングコストも抑えられます。
医療モール内には、診療科目の異なる複数のクリニックが入っているので、専門外の疾患でもモール全体として対応しやすく、結果としてグループ診療の形をとった質の高い医療を実施できます。
同じ医療モール内で運営する他のクリニックの評判が悪い場合、医療モール全体に悪影響をおよぼす可能性があります。また医療モール内では日頃から他のクリニックや調剤薬局のスタッフと顔を合わせることになり、人間関係が悪くなると居心地が悪くなる場合もあります。医療モールの運営会社により、内装業者や医療機器の選定に制約が発生する場合もあります。
医療モール開業する際には、いくつか注意するべき点があります。ここでは、その1つ1つについて解説していきます。
医療モールのクリニックは、多くの人によって成り立っています。患者やスタッフだけでなく、他のクリニックの医師やスタッフなどとも普段からコミュニケーションを取り、信頼関係を築く必要があります。当たり前と思えるようなことでも、意外と相手に通じていないこともあるので、確認を怠らないようにしましょう。
開業に医療モールを選定する際は、立地が診療コンセプトと合致するかどうかを考慮にいれておくことが大事です。例えば、仕事をしている保護者が通いやすいと考える小児科は、住宅街や保育所などに近い場所になってくるでしょう。また競合クリニックのチェックも必要なので、その医療モールに入っているクリニックについて、インターネットで口コミなどを調べてみることも有効です。
クリニックの運営にかかる広告宣伝費は、例えば都心の開業医の相場は月10~30万円程度です。費用のうち多くは、インターネット上の広告です。ホームページの情報で来院を決める人は多いので、目を引くようなレイアウトや、来院したくなるような工夫は不可欠です。広告規制の範囲内なら、クリニックの専門性を強くアピールできます。
特定のキーワードで検索した際に、目立つ場所へ広告を表示させるリスティング広告も有効です。調べる意欲がある人に対して、強い宣伝効果が見込めます。医療に関する広告はさまざまな規制があるため、専門知識を持ったパートナーに相談しましょう。
オープニングスタッフの採用は重要です。最初の来院時の雰囲気は、クリニックの印象を大きく左右します。クリニックのコンセプトに合ったスタッフを採用するようにしましょう。なお、患者との相性やクリニック内の人間関係によりスタッフが辞めるケースも少なくないです。
スタッフが抜けた穴は大きく、再び採用と育成、フォローなどの労力がかかります。給与の金額ではなく働きやすさを重視する人も少なくないので、スタッフが長く居られるよう人事採用にも力をいれるべきです。
医療モール開業はランニングコストを抑えやすいとはいえ、開業当初は黒字経営は難しいので、広告宣伝費などの費用も含め、資金計画をきちんと立てる必要があります。少なくとも開業から3年程度は赤字経営が続くという前提で資金計画を立てましょう。
また、予期せぬ事態による資金不足を防ぐためにも、医業収入の予測は低めに、経費の見込みは高めに設定しておくことをおすすめします。なお、患者数は利益に直結するので、来院患者数や予測については、細かく分析することが大事です。