公開日: |更新日:

借金地獄に陥りやすい開業医の特徴

長く勤務医として働いているドクターの中には、収入の面から開業を検討している方も多いと思われます。確かに開業医は勤務医より平均年収が高い傾向にあります。しかし、さまざまな理由で借金地獄に陥ってしまう開業医も少なくないのです。

医師としてのキャリアを積み、そして経営者として念願の独立を果たした開業医。それがなぜ借金に苦しむことになるのか、その理由を探ってみましょう。

借金地獄に陥りやすい開業医の8つの特徴

1.マネジメント感覚がない

医師としての知識やスキルだけでは、決して開業を成功させることはできません。

決められた仕事をこなすことだけを求められた勤務医時代とは異なり、開業して自分が経営者になると、診療のほかにも資金繰りや税金対策、スタッフの採用や教育など、さまざまなマネジメント業務が押し寄せてきます。マネジメントが上手くいかなければ、その結果はクリニックの経営に確実に表れ、費用に収入が追いつかず借金まみれになりかねないのです。

開業を成功させるためには、経営者である院長のマネジメント感覚が非常に重要であることを心得ておきましょう。

2.返済計画が甘い

開業に必要な資金は、事業計画の立て方によって大幅に変動します。それはつまり、院長たるご自身の考え方次第ということです。

必要以上の投資をしてしまうと、開業してから返済に苦しむことは目に見えています。どうしても必要な投資なのか、クリニックの経営が軌道に乗ってからでも間に合うのか、開業前の時点で慎重に検討すべきです。

苦労してクリニックを開業したのに、資金を返済できずに運営が行き詰まってしまっては意味がありません。決して過剰投資にならないこと、返済計画には余裕を持たせることが大切です。

3.収支のバランスが悪い

一般的なクリニックにおいて、支出の多くを占めるのは「人件費」と「家賃(テナント料)」です。こうした固定費用は毎月必ず発生するため、そこに投資しすぎると患者さんが少し減っただけでもあっという間に収支のバランスが崩れてしまいます。

無計画にスタッフを採用したり、必要以上に広いテナントで開業したりすれば、それだけで返済が苦しくなるのは火を見るよりも明らかです。つまり、固定費用が高ければ高いほど借金地獄に陥る可能性も高くなるといえるでしょう。

4.コミュニケーション能力が低い

勤務医であれば、ある程度は病院のネームバリュー等で患者さんを集められるため、コミュニケーション能力が多少低くても何とかやっていけます。しかし、開業医でコミュニケーション能力が低いのは致命的です。

開業医は基本的にゼロからのスタートですから、少しずつ患者さんを集めていかなければなりません。評判を高めるためには医師としての知識やスキルに加えて、患者さんやスタッフとの良好なコミュニケーションも不可欠です。したがって、コミュニケーション能力が低いとクリニックの経営が軌道に乗らないまま借金だけが残ることにもなりかねないのです。

5.患者のニーズを汲み取れない

子どもが少ないエリアで小児科クリニックを開業しても患者さんが増えないように、患者さんのニーズを汲み取れなければ開業を成功させることは不可能です。そして診療科目だけではなく、患者さんのニーズに沿ったクリニックのコンセプトを掲げることも開業を成功に導くためには欠かせません。

とはいえ、さまざまな患者さんのニーズに応えようとして診療科目をむやみに増やすのは考えものです。専門外の診療科目を掲げるのは信用問題に関わり、他院からも患者さんを紹介されなくなってしまいます。

6.スタッフをないがしろにする、意見を聞こうとしない

当たり前の話ですが、医師一人でクリニックを開業できるわけではなく、看護師や事務スタッフの力を借りなければなりません。しかし、医師が独善的でスタッフをないがしろにしたり、意見を聞こうとしなかったりすると、いずれスタッフはついてこなくなるでしょう。

そうなるとクリニックの雰囲気は悪化の一途をたどります。患者さんはそんな雰囲気に敏感です。次第に患者さんは離れていき、気づいたときにはクリニックの経営が傾いて借金地獄が目前に迫っているかもしれません。

7.クリニックの開業自体がゴールになっている

「勤務医は忙しいから、開業して楽になりたい」「勤務医は給料が安いから、開業して収入をアップさせたい」もちろん、開業を目指すきっかけとしては十分な理由ですが、それだけではクリニックの開業自体がゴールになってしまいます。開業はあくまでもスタートであって、決してゴールではないのです。

どんなクリニックを目指すのか、明確なビジョンがなければしっかりした事業計画も立てられません。患者さんにとってもスタッフにとっても魅力的なクリニックにはならず、当然ながら経営も安定させられないでしょう。

8.浪費癖がある、開業前後に浪費してしまう

将来的にクリニックの開業が成功することを根拠もなく信じ込み、開業前後に浪費してしまう医師も少なくありません。クリニックへの莫大な初期投資、マイホームや高級車など浪費の形はさまざまですが、こういったケースも借金地獄に陥りやすい典型的なパターンです。

開業直後は収入が不安定なことも多く、場合によっては私財を切り崩すことも必要になるかもしれません。万が一の場合でも立て直せるように、開業前後の浪費は避けるべきです。

開業後に借金地獄に陥らないための注意点

開業してから借金地獄に陥らないためには、収支や返済に関する詳細なシミュレーションを行ない、可能な限り事前に対策をとっておくことです。大切なポイントをいくつかお伝えしましょう。

綿密な事業計画・資金計画を立てる

前述のとおり、クリニックは開業することがゴール=目的ではなく、経営を安定させることが何より重要です。せっかく開業しても経営が上手くいかなければ、短期間で閉院して借金だけが残ってしまう可能性があります。事実、そんなクリニックも少なくありません。

そうならないためには、事前に綿密な事業計画・資金計画を立て、無理のない返済が可能かどうかをきちんとシミュレーションすることが必要です。甘い見通しだけではリスクヘッジにならないので、目標に届かなかった場合を想定した複数の収支パターンを作成することをおすすめします。

事前に患者のニーズを把握しておく

事前のシミュレーションは上記のようなお金に関することだけではありません。患者さんのニーズを満たすためにはどのような準備が必要か、診療面でのシミュレーションも慎重に行なわなければなりません。

どんなに医療の質が高度なクリニックでも、患者さんのニーズに合わなければ経営を安定させることは不可能です。開業に際しては患者さんのニーズを十分に把握すること、これができなければずるずると借金を重ねる羽目になってしまうかもしれません。

設備への過剰投資を控える

開業医が借金地獄に陥る典型的なパターンのひとつが、設備への過剰投資です。限られた開業資金の多くを設備投資に回してしまい、運転資金が乏しくなって開業後に資金繰りが苦しくなるケースは数多くあります。

開業にあたって高額な医療機器を導入したい気持ちはよくわかりますが、大切なのは採算性です。場合によっては外部の医療機関との連携による共同利用や検査会社への外注なども検討し、無理のない範囲で設備投資を行なうことが重要です。

借金が怖いから融資はできるだけ少なめに…もNG

「融資イコール借金」という考え方は間違ってはいません。ですが、だからといって融資をできるだけ少なくしようとするのも問題があります。

どんなに綿密な事業計画を立てたとしても、実際には何が起こるかわかりません。予定どおり患者さんが集まらなければ赤字が続き、もし現金が底をついたらそこでおしまいです。大切なのは、できるだけ現金を手元に残しておくことです。万が一のことを考え、開業前には運転資金に余裕を持てるように融資を受けるべきです。開業後に資金繰りが苦しくなってからでは、金融機関の見る目も変わって融資の条件が格段に厳しくなってしまいます。

開業コンサルタントに依頼する

借金地獄に陥らないためのポイントは、ひとつひとつ見ればどれも至極当然のことと思えるかもしれません。ですが、これらすべてを医師だけでこなしていくのは時間的にも労力的にも難しいでしょう。ここは専門的な知見を持つプロのサポートを受けるのが賢明です。

信頼できる開業コンサルタントに依頼し、堅実かつ実現性の高い事業計画を立て、綿密なシミュレーションを行なっていくことで、開業後の借金地獄からも逃れられるはずです。

まとめ

上記のように、高年収と借金地獄の分かれ道には当たり前のようで難しい要因がいくつもあります。こうしたハードルを乗り越えた先に、開業医としての成功が見えてくるのです。

繰り返しになりますが、開業にあたっては現実味のある事業計画と余裕のある返済計画が非常に重要です。借金地獄に陥らないよう、開業前にしっかり対策を練っておきましょう。