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医療機器は購入する?リースがいい?

クリニックの開業にあたって医療機器を導入する場合、購入するかリースにするか悩むドクターも多いようです。これは一概にどちらがいいというわけではなく、それぞれに利点があるため。開業時の財務状況などに応じて決めていく必要があります。

ここでは医療機器の購入・リースそれぞれのメリット、デメリットをお伝えします。

リースのメリット・デメリット

医療機器をリースするメリット

初期費用を抑えられる

リースを選択する最大のメリットは、やはり開業時の初期費用を抑えられることでしょう。

医療機器は高額なものが多く、購入するとなると多額の資金を準備しなければなりません。リースであれば毎月のリース料を支払っていく方式のため、その分のまとまった資金を他への投資に回すことも検討できます。

導入時の手続き・契約が簡単

医療機器を購入するために金融機関から借り入れを行なうとなると、相応の審査や物的担保が必要です。

リースの場合、医療業であれば与信審査に通らないということはまず起こりません。物的担保も不要なので、借り入れに比べると手続きや契約は非常に簡単だといえます。

新しい機種に更新しやすい

新しい機種を更新しやすいのもリースならではのメリットです。

購入した医療機器を更新する場合は古い機器の処分や手続きにコストを要しますが、リースの場合は基本的にコストが発生しません。契約期間の満了に合わせて新しい機種のリース契約を行なうことで、手軽に入れ替えが実行できます。

固定資産税や保険料の支払いが不要

医療機器を購入した場合、種類や金額に応じた固定資産税が発生します。突発的な故障や不具合に備えた損害保険料の支払いも必要になってくるでしょう。

リースの場合、固定資産税や保険料を支払うのは機器の所有者であるリース会社です。結果として管理費としてのランニングコストが抑えられます。

医療機器をリースするデメリット

総額では購入より割高になる

一般的にリースの手数料は借り入れよりも金利が高く、支払総額でみるとリースは購入するよりも割高になります。初期費用を抑えられるのは大きな魅力ですが、全体としては高額になってしまうのがリースのデメリットといえるでしょう。

また、医療機器を購入すると金額に応じて「高額な医療用機器の特別償却制度」を利用できますが、リースの場合はこのような税務上の特典は受けられません。

中途解約できない

中途解約ができないのもリースのデメリットです。いったん契約したら、リース期間中はその医療機器を借り続けることになります。

もちろん、違約金として残存期間のリース料を支払えば解約できますが、支払総額は変わりません。契約の前に十分な説明やデモンストレーションを受け、無駄なリースにならないようにしましょう。

購入のメリット・デメリット

医療機器を購入するメリット

医療機器の購入、つまり買い取りは、リースに比べると支払総額は安価です。リースは手数料が高額のため、毎月の支払金額は小さくてもリース期間や契約内容次第で支払総額が大きくなってしまうのです。

開業時に医療機器を購入すると初期費用も膨らみますが、リース手数料のような付随費用はありません。購入のために借り入れを行なったとしても、その金利がリース手数料を上回ることはないでしょう。また、現金一括購入であれば値引き交渉がしやすいというメリットもあります。

税制上の優遇措置がある

医療機器を購入すると、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。具体的には、取得価格が500万円以上の高額医療機器を購入すると「高額な医療用機器の特別償却制度」が適用されるのです。取得価格の12%を特別償却費として経費計上できるので、大きな節税効果が期待できます。

ただし、この制度の対象となる医療機器には詳細な規定があり、税務面でのメリット・デメリットを判断するには専門的な知識が必要です。会計士や税理士など専門家に相談したほうが無難でしょう。

減価償却費を計上できる

減価償却費を費用計上できるのも、医療機器を購入するメリットのひとつです。

医療機器のように高額な固定資産を購入した場合、購入費用を全額その年度の経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて按分した金額を経費として計上するのが減価償却費の仕組みです。購入した年度が赤字になる可能性を少なくし、利益も抑えられるので節税対策にもつながります。

医療機器を購入するデメリット

初期費用が高い

前述のとおり、開業に際して医療機器を購入するには多額の初期費用が必要です。特にCTなどの大型画像診断装置は、スペックにもよりますが機器単体でも数千万円単位の投資になります。

自己資金が潤沢であればともかく、多くの場合は金融機関からの借り入れで購入費用を工面することになるため、他の設備投資と合わせると莫大な初期費用になってしまうケースも少なくありません。

機器の変更が難しい

購入した医療機器を更新する場合、古い機器の処分にはコストが発生します。下取りに出すにしても相応の手間はかかってしまいます。

リースのように単純に古い機器を引き取ってもらうわけにはいかないため、短期間で簡単に機器を変更できないのは購入のデメリットといえるでしょう。

煩雑な会計処理が必要になる

医療機器をリースで導入すると、減価償却や保険料、償却資産税といった煩雑な会計処理は所有者であるリース会社が対応することになります。購入する場合はそういった会計処理をクリニック側で行なわなければなりません。

顧問税理士など専門家がいなければ、相応の知識と時間、労力を要するため大きな手間になってしまいます。

購入とリース、どちらにすべき?

開業に際して自己資金が潤沢であれば、それなりの初期投資が可能なため購入という選択肢も十分に検討できるでしょう。前述のとおり、支払総額が抑えられて税制上の優遇措置も受けられます。

しかし、頻繁なモデルチェンジやバージョンアップがなされる医療機器であれば、せっかく大枚をはたいて購入しても長く活用できず、無駄になってしまうかもしれません。もちろん患者さんも、クリニックに導入されている医療機器が新しいかどうかに注目しています。

したがって、長期間にわたって使用する見込みの高い医療機器であれば購入、短期間での更新が見込まれる医療機器であればリースを選択するのがおすすめです。

自己資金が少ない場合

もし自己資金が少なく、相応の借り入れを要する場合はリースの活用がおすすめです。高額な医療機器を購入すると借入金も大きくなり、それだけ財務的なリスクを抱えることになります。もちろん開業後の運転資金も確保しておかなければならないので、医療機器を購入するために自己資金を使い切ってしまうわけにはいきません。

したがって、特に自己資金が少ない場合はリースの活用を検討してみましょう。そうすれば金融機関の融資枠を医療機器の導入のために削ることなく、別の有効な投資に配分することも可能になります。

まとめ

医療機器の導入は、クリニックの開業において特に大きなコストが動く部分です。お伝えしてきたとおり購入・リースにはそれぞれメリット・デメリットがあり、開業資金の準備状況に加えて開業後の経営も見据え、長期的な視点で検討しなければなりません。

重要なのは、クリニックの資金繰りに基づいて判断することです。それには収入と支出のバランス、医療機器のランニングコストや耐用年数、税制面での問題などが関わってきます。

もし判断が難しいようなら、専門的な知見を持つ経験豊富なクリニック開業コンサルに相談するのがおすすめです。