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オンコールがしんどい…

勤務医が抱えている悩みのひとつに労働時間の長さがありますが、病院の外にいてもオンコールがあるので落ち着いて過ごせないという声も聞かれます。実質的な拘束時間ともいえるオンコール対応ですが、勤務医である以上、そこから逃れることは困難です。

ここでは勤務医のオンコール対応の現状と、その解決策についてじっくり考えてみましょう。

医師のオンコール勤務の実情

日本病院会の調査によると、対象である405病院のうちオンコール体制をとっている病院は340病院、全体の84%に上ることがわかっています。医師の人数が多ければ交代制をとれるので月の数回のオンコールで済むかもしれませんが、医師の人数が少なければどうしても頻度が上がります。中には休日が常にオンコール待機というケースも見られ、担当医にとっては緊張感から解放されることのない休日を過ごすことになってしまいます。

とくに訪問診療を実施している医療機関などでは在宅患者さんの急変も多く、小規模のクリニックであれば頻繁なオンコール対応に追われる可能性が高くなります。

※参照元:一般社団法人日本病院会「2019年度 勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査 報告書」https://www.hospital.or.jp/pdf/06_20191126_01.pdf

オンコール待機中の過ごし方

待機時のルールは勤務先によって異なる

オンコール待機時のルールは、それぞれの医療機関によって独自に設定されています。一般的には、「呼び出されたら30分以内に到着すること」「アルコール等を控え、すぐに勤務可能な準備をしておくこと」などが挙げられます。

中には「医療機関から半径5km圏内で待機すること」など細かい条件を設定しているところもあります。そうしたルールを守りながらいかに身体を休ませるかがポイントですが、いずれにしてもオンコール待機中は時間を好きに使うことはできないと考えたほうがいいでしょう。

ルールを守れば過ごし方は自由

とはいえ、ルールさえ守っていれば基本的に行動の制限はなく、過ごし方は自由です。趣味を楽しんだり、家族と一緒に出かけたりすることも可能です。オンコール待機中であっても、プライベートの時間が少ない医師にとっては心身を休める貴重な時間だといえます。

ただし、いつでも電話に出られてすぐに移動できる手段を確保しておく必要があります。そうなると完全なプライベートの時間とは言いにくいのが実情です。

予定も制限されがち

オンコール待機中のルールを守っていたとしても、すぐに離れにくい環境に身を置くのは落ち着きません。たとえば美容室や映画館、コンサートなどは緊急の連絡に対応できない可能性が高いので、オンコール待機中にそういった予定を入れるのは難しいでしょう。

もちろんアルコールも控えなければならないので、オンコール待機中の過ごし方や居場所はどうしても制限されます。必ず連絡が取れる状態で趣味を楽しんだり、休息の時間を取ったりという過ごし方にならざるを得ないでしょう。

オンコール勤務の悩み、しんどいと感じる理由

拘束される時間が長くなる

脳神経外科や産婦人科など、24時間体制で患者さんを受け入れている診療科ではオンコール勤務が多くなります。したがって、医師の人数が少ない医療機関では業務の負担が重くなってしまいます。

実際に呼び出されない日もあるとはいえ、月に10回以上もオンコール待機を担当するのは相当な負担です。患者さんの状態によっては1回のオンコール呼び出しで何時間も拘束され、そのまま勤務時間に突入することもあります。オンコールと勤務時間を合わせて丸1日以上も病院に拘束されることというケースも珍しくないようです。

せっかくの休日も気が休まらない、自由に過ごせない

前述のとおり、オンコール待機中は呼ばれたらすぐに駆けつけなければならないので、せっかくの休日でも完全に自由には過ごすことができません。いつ連絡が来るかわからないという緊張感もストレスにつながります。

医師である以上は患者さんの急変に対応することも重要な仕事であり、医師としてのやりがいを感じられる瞬間でもあるはずです。しかし、それは医師本人の心身の健康を伴ってこそです。あまりにオンコール対応が頻回であれば、負担のほうを大きく感じてしまうでしょう。

手当・報酬が安く、見合わないと感じる

医療機関によって差はありますが、オンコールを担当した場合は「待機手当」が支給されます。実際に呼び出された場合は別途手当を上乗せしている医療機関もあります。ただ、手当を時給換算で支給するケースはほとんどなく、当直手当と比べると報酬は低くなる傾向にあります。

救急対応が多い医療機関なら、オンコール待機中に何度も呼び出しがかかることも少なくないでしょう。そうなると、報酬が実際の業務内容に見合わないと感じてしまうのも無理はありません。

手当・報酬が支払われない可能性もある

前述のとおり、多くの医療機関ではオンコールの待機手当を支給していますが、中には実際に呼び出しがない限りは業務時間とせず、報酬を支払わない医療機関もあります。オンコールの報酬をめぐって医師と医療機関との間で裁判に発展した事例もあり、そこでは最高裁判所が「オンコールは労働時間に該当しない」という判決を出しています。

オンコールを担当する医師にとってはせっかくの休日でも気が休まらないのに、さらに手当がないとなると相当な不満を抱えることになるでしょう。

オンコールがない・少ない職場や働き方

先ほどオンコールが多い診療科として脳神経外科や産婦人科を挙げましたが、そうではない診療科もありますし、そもそも医療機関の診療体制によっても変わってきます。オンコールがない、もしくは少ない職場を希望する場合は、どんな働き方を考えるべきでしょうか。

オンコールの少ない診療科に転科する

オンコールで呼び出される理由の多くは、救急患者さんの搬入や入院患者さんの急変です。そう考えると、症状が落ち着いた患者さんが多い慢性期病院や内科、精神科などは呼び出しが少ない傾向にありそうです。また、救急対応を行なっていないクリニックなら、そもそもオンコールという仕組みがないでしょう。

このほか、産業医や美容医療、健診などの担当医であれば基本的にオンコールはありません。

医師が多い病院に転職する

緊急手術を請け負うような外科系の病院であれば、必ず誰かがオンコールを担当しなければなりません。しかし、医師の人数が多ければそれだけオンコール担当の頻度も少なくなるはずです。逆に、救急患者さんの受け入れが少ない病院でも、医師の数が少なければオンコール担当の頻度は上がります。

オンコールの負担を理由に転職を検討する場合は、第一に医師の人数が多い病院を候補として挙げることが重要です。

開業医になる

オンコール対応の負担に限らず、勤務医が抱えるさまざまな悩みから解放されるには、思い切って開業することも選択肢のひとつです。自身が経営者として裁量権を発揮することになるので、オンコール対応の有無なども自由に決められます。

ただし、クリニックの開業には相応のハードルの高さもあります。すべてをゼロから構築していく新規開業だけではなく、既存のクリニックを引き継ぐ継承開業なども検討してみてはいかがでしょうか。

非常勤・アルバイトとして働く

非常勤やアルバイトとして働くのであれば、基本的には担当患者さんがいないのでオンコールから外れると思われます。ただし、医師の人数が少ない医療機関であれば、非常勤でもオンコール対応に駆り出されるかもしれません。

いずれにしても、オンコール対応に負担を感じているのであれば、勤務先を選ぶ際にしっかりチェックしておくことが大切です。

医師のオンコールに関するまとめ

救急患者さんの搬入や入院患者さんの急変に備えることを考えると、医療機関にとってオンコール対応はどうしても必要な業務です。しかし、医師の立場からすると休日を自由に過ごせないストレスを抱えることになり、大きな負担になっていることも事実です。あまりオンコールを担当したくないと願う医師が多いのも無理はないでしょう。

ここではオンコールを少なくするための事例を挙げてきましたが、何より自分に合った働き方を見つけることが大切です。