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今も昔も「医者は高収入」「食いっぱぐれることはない」といわれてきましたが、実際のところはどうなのでしょうか。おそらく「忙しい割には年収が低い」と感じている医師も少なくないはずです。将来に向けて収入をどう増やしていくか、これは一般のサラリーマンと同じく医師にとっても大きなテーマです。
医師が年収を上げるにはどんな方法があるのか、じっくり考えてみましょう。
勤務医であれば、まずは給与アップについて病院側と交渉してみることです。病院の規模や在籍する医師数によっても変わりますが、通常は医師に辞められると病院にとって大きなダメージになりますから、少なくとも話は聞いてもらえるのではないでしょうか。病院への貢献度が高い医師なら、給与アップの可能性も高いはずです。
ただ、職場の人間関係によってはお金の話がしにくい場合もあるかもしれません。また、希望どおり給与が上がったとしても、それに対する実績や貢献を求められることは間違いないでしょう。
収入面で評価されやすい資格といえば、やはり専門分野の学会資格です。認定医、専門医、指導医といった資格の取得には手がけた症例数など具体的な実績が必要になるため、スキルや知識を有している裏付けにもなります。
また、専門分野以外でも取得できる資格はたくさんあります。代表的なものを挙げると、産業医や認知症サポート医、難病指定医、インフェクションコントロールドクター(ICD)などでしょうか。これらの資格は医師の活躍の領域を広げてくれるため、将来的な年収アップにもつながる可能性があります。
勤務医として出世して高い役職に就けば、相応の責任もついて回りますが収入も上がります。また、医師不足の地域であれば、最初から管理職として高額な年収を提示している医療機関も数多くあります。
もちろん過去の経験や実績が認められれば、それだけで高年収を得ることも可能でしょう。裏を返せば、高年収を得るまでにはそれなりの時間も必要だということです。そして、実績が認められて50歳で院長に就任したとしても、医師としてのキャリアを考えると高年収を得られる期間はそう長くはありません。
また、勤務医である以上は他にも出世を目指すライバルがいるはずです。医療機関によっては競争率も高いでしょうから、自身のキャリアプランをしっかり組み立てながら働いていく必要があります。
現在の診療科では思うように年収が増えない、割に合わない、そんな経済的な理由から転科を考える医師も多くいます。
一般論でいえば、自由診療に携わる医師は高収入だと考えられています。美容外科や美容皮膚科に転科する医師が多いのは、そのような背景もあるでしょう。皮膚科医や形成外科医が将来的な開業に向けて、美容医療を習得するために転科するケースも多いようです。
また、心臓血管外科における胸腔鏡手術や消化器外科における腹腔鏡手術など、希少なスキルを有する医師も高収入を得ています。決して転科は容易ではありませんが、大幅な年収アップを目指してチャレンジする医師もいます。
いずれにしても、転科は早いほど有利です。その領域で経験を積んできた医師に早く追いつくためにも、できるだけ早期の決断をおすすめします。
アルバイトで副収入を得ている医師はとても多く、本業だけでは満足のいく収入が得られないことの裏返しとも考えられます。
医師のアルバイトの定番といえば当直や健康診断ですが、月に3~4回程度こなせれば年間で300~400万円の収入アップが見込め、へき地の週末当直ならさらに高額なアルバイト料が期待できるかもしれません。ただし、貴重な本業の休日や勤務外の時間を費やすことになるのを覚悟しましょう。
また、本業の勤務先によっては副業が禁止されている場合もあるので注意が必要です。
現在の給料に満足できないのであれば、より待遇の良い職場に転職するのも一手です。勤務医の転職は珍しいことではなく、それだけ選択しやすい方法だともいえます。
医師不足の問題を抱えている病院は数知れず、転職してくる医師に対して好待遇で迎えたいと考える病院も多いはずです。もちろん病院によって規模や診療科も違うので、自身の経験とキャリアを高められるという収入面以外のメリットもあります。
ただし、好待遇の病院はそれだけ仕事量も増える可能性があることを覚えておきましょう。
一般的に、経営さえ安定すれば開業医の年収は勤務医をはるかに上回ります。医師としてのキャリアを積んでいく中で、高年収を望む医師が考えるのが開業という選択肢です。
もちろん、開業イコール高収入が約束されているわけではありません。開業エリアや診療科によっても大きな差がありますし、何より経営者としての手腕も求められます。それでも開業を目指す医師が多いのは、収入面だけではなく、自分が思うような働き方や診療方針を自由に決められるというメリットがあるからです。
開業には相応の資金が必要で、膨大な事務作業など準備にも時間がかかります。開業後の経営にはさまざまなリスクもついて回ります。そういった面を考えると、専門家の力も借りながらじっくり腰を据えて検討していかなければなりません。
厚生労働省中央社会保険医療協議会が令和3年に実施した「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、勤務医の平均年収が約1,445万円であることに対して開業医の平均年収は約1,704万円と高水準であることがわかります。仮に勤務医が出世して院長になったとしても、同年代の開業医の平均年収には遠く及ばないでしょう。
確かに開業医は患者数によって収入が変動しますから、安定という面では契約上の年収が約束されている勤務医に分があります。その代わり、勤務医はどれだけ高収入といっても上限がありますが、開業医にはそれがありません。
勤務医の年収は年齢や診療科、経験、勤務する医療機関の規模や地域などによって大きく変わります。もちろん、キャリアを積んでいくことで年収も上がっていくはずです。
ただし、同じ勤務先での給与アップには限界があります。さらなる高収入を目指すのであれば、ここで紹介した方法や開業といった選択肢を検討していくことになるでしょう。
もちろん年収は高いに越したことはありませんが、仕事量や働きやすさ、税金の問題もあります。自分にとって年収のほかに重視するものは何か、改めて振り返ってみることも大切です。