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クリニックの開業を考えるうえで、非常に大きなウェイトを占めるのが建築コストです。
物件取得費や内装工事費、設備導入費など、さまざまな要素が複雑に絡み合っているため、実際にいくらかかるのか分かりづらいと感じる医師の方も多いでしょう。
「そんなにお金がかかるの?」「もっと安く済むんじゃないの?」という声も多く、ここでは2000年代から2024年に至るまでの建築コストの推移と、実際にどういう部分で費用が発生しているのかをわかりやすく解説していきます。
土地を購入して一戸建てでクリニックを建てる場合、土地代がコストに大きく影響します。
都市部や住宅街の人気エリアでは1,000万円〜数千万円に及ぶこともあります。
一方、テナント開業であれば敷金・礼金・保証金などの初期費用が発生し、これも数百万円単位になるケースが多く見られます。
建物の構造(木造、鉄骨、RC造)、延床面積、外観デザイン、診療科による必要設備の違いなどにより大きく変動します。
医療ガス配管、クリーンルーム対応、バリアフリー設計など、医療施設ならではの仕様が建築費を押し上げます。
診察台、ベッド、収納、受付まわりの什器類なども費用に含める必要があります。
設備のグレードや新旧により価格差が大きく、数百万円〜1,000万円以上となるケースも少なくありません。
2000年代前半は建築費が比較的安価に収まっていた時代です。
クリニック一戸建ての建築単価は坪あたり50〜60万円前後が一般的で、開業費用も5,000万〜6,000万円台で収まるケースが多く見られました。
東日本大震災以降の復興需要や東京オリンピック準備による建設ラッシュで資材価格や人件費が上昇しました。
坪単価は60〜80万円台へとシフトし、建築費の総額も1.2〜1.5倍に膨らんでいきました。
新型コロナウイルスの影響による物流停滞、ウッドショック、円安、人件費の増加などが重なり、建築単価はさらに上昇。
坪単価が80万円〜100万円超となる例もあり、開業費用が7,000万円〜1億円近くに達するケースも増えています。
建築コストが高騰する背景には、医療施設ならではの特殊仕様や法的制約が大きく関わっています。
透析クリニックであれば給排水や電源容量に特別な配慮が必要、レントゲン室には遮蔽構造が求められるなど、一般建築とは異なる配慮が必要です。
また、消防法や建築基準法などの法改正が設備や設計に影響し、コストに反映されることも少なくありません。
医療機関としての信頼性、安全性、衛生環境を確保するための建築コストは、患者の安心につながる重要な投資ともいえます。
「本当にそんなにかかるのか?」という問いには、「必要な理由があるからこそ、コストが発生している」というのが正直な答えです。
前クリニックの設備や内装が残っている「居抜き物件」を活用することで、建築コストを大幅に削減できます。
工事費が抑えられるだけでなく、開業までの準備期間も短縮できます。
医療施設の建築に精通した業者の中には、コスト最適化のノウハウを持つところもあります。
複数社に見積りを依頼し、価格と品質、実績のバランスを見ながら選定することが大切です。
地域によっては、医療施設の新設やIT導入、省エネ設備に対する助成制度が存在します。
直接的な建築費に使えない場合でも、他費用の軽減によってトータルコストを抑えられる可能性があります。
2000年代から2024年にかけて、クリニックの建築コストは着実に上昇してきました。
「本当にそんなにかかるの?」という疑問に対しては、医療施設として求められる機能・安全性を確保するために、必要なコストであるといえます。
ただし、開業スタイルや物件の選び方、施工業者、補助制度の活用次第で、コストを現実的な水準に抑えることは可能です。
開業支援の専門家と連携し、無理のない資金計画を立てながら、理想のクリニックを形にしていきましょう。