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「中小企業白書 2011」に掲載されている「事業所・企業統計調査による業種別の開廃業率(2004~2006年、企業単位、年平均)」を見ると、12ある業種の中で開業率が廃業率を大きく上回っているのが情報通信業と医療・福祉。情報通信業=IT関連は大きな成長性が期待される分野で、医療・福祉は雇用創出が期待される分野といわれています。
クリニック開業は起業という意味で社会的ニーズに沿っているともいえそうですが、すべてが成功するわけではなく、開業後にこんなはずではなかった!と後悔しないために、勤務医との違いを中心として失敗の要因を紹介します。
勤務医だと当直や雑務などに追われ心身とも疲弊するケースもあり、開業医が羨ましく見えることでしょう。ただし、勤務医なら立場や収入は安定しますし、トラブル時などは組織対応が基本で、チームとしてのサポートが受けやすいといったメリットもあることを忘れてはなりません。
クリニックの運営方針は自分の裁量で決められますし、無床クリニックならスケジュールも自由が利きます。そして、集患に比例してオーナーである開業医本人の収入もアップするので、モチベーションアップになります。
開業医は医師+経営者という立場になるため、人事や総務、経理、集患などすべての責任は自分に跳ね返ってきます。勤務医時代に管理職を経験した方でも、特に資金計画や集患は様々な課題に直面することを想定してください。
厚生労働省のサイトには「医療経済実態調査報告」(平成21年6月実施)を引用して、病院勤務医の年収が1,479万円(月123万円)、開業医(法人等)の年収が2,530万円(月211万円)、開業医(個人)の年収が2,458万円(月205万円)と記載されています。
勤務医は給与ですが、開業医(個人)は収支差額。開業医の場合、院長としての報酬だけでなく開業資金の返済や退職金相当の積立などが加味されます。社会保険や労働保険、使える経費なども変わってくるので開業のシミュレーション時は手取額まで試算しておきましょう。
また、診療科目別の損益差額(個人診療所入院診療収益なし)の参考値では、中央社会保険医療協議会「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 -令和元年実施- p.149~151」のデータを紹介します。全体平均は2,374.2万円、最高が小児科の3,68.1万円で最低が眼科の1,511.9万円となっています。
勤務医のタスクは診療科目によって様々なので、ここでは一般的な外科の主要タスクをピックアップしておきます。
こうした業務にプラスして、当直やオンコール対応をすることもあります。これが勤務医となると外来業務がメインとなり、医師としての勤務時間は自分で調整できます。
ただし、開業医には経営者としての業務もあります。人材育成や資金調達など診療時間とは別な部分で時間をとられます。医師会の行事など外部との交流では休日に予定が入ることもあるでしょう。個人の開業医は、医師としても事業主としても全責任を負うべき立場。他の人に変わってもらうことができないタスクが多々あることは知っておいてください。