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クリニック開業と内覧会

新築のマンションなどと同様に、クリニックの開業前にも内覧会が開催される場合があります。もちろん開催は必須ではありませんが、開業後の集患効果も期待できるので、開催を検討する価値はあるでしょう。

ここでは、クリニック開業時の内覧会について、その必要性や準備などについて説明します。

内覧会の必要性

まずは内覧会の必要性、開催の目的を理解しておきましょう。

クリニックの認知度を高めるため

開業前に内覧会を実施すると、クリニックの存在を地域住民に認知してもらえます。

さまざまな広告媒体やSNSでもクリニックのPRは可能ですが、内覧会なら来場者にクリニックのコンセプトや診療内容、医療設備などを直接アピールできます。そんなふうに認知度を格段に上げられるのは、実際の現場を見てもらえる内覧会ならではの大きなメリットです。

クリニックの信頼性を高めるため

内覧会は、院長やスタッフにとって初めての患者さんとの交流の場でもあります。顔や人柄を知ってもらい、診療方針なども伝えることができれば、クリニックへの信頼性が高まって口コミ効果も広まっていくでしょう。

口コミは広まるまでに時間がかかるものですが、開業前の内覧会を成功させることで、クリニックの信頼性に関する口コミが早く広まることも期待できます。

開業後の経営を安定させるため

クリニックの経営を安定させる最大の要因は「集患」です。そして前述の「認知度」「信頼性」が集患に直結することを考えると、開業後の経営を安定させるための手段のひとつとして内覧会を位置づけるべきでしょう。

内覧会では将来的な患者さんと直接的なコミュニケーションを取れるので、診療ニーズを把握するチャンスでもあります。そういった情報も、クリニックの経営を安定させるために欠かせないものです。

内覧会の準備

内覧会を成功させるためには綿密な準備が必要です。どんな作業が必要なのか、具体的に見ていきましょう。

ステップ1:開催日時の設定

当然ですが、もっとも多くの来場者が見込める日時に設定することが大切です。地域性にもよりますが、基本的には開業日直前の土曜日もしくは日曜日がおすすめです。

時間帯はお昼を挟んで10時から16時頃までの開催にするなど、人が集まりやすいように広く設定すべきです。開催日時が祝日を含む連休にぶつかる場合は、外出する可能性が低くなる連休後半に設定したほうがいいでしょう。

ステップ2:チラシの作成

開催日時が決まったら、そのスケジュールとクリニックの紹介などを見やすくまとめたチラシを作成します。開業前はウェブサイトで案内しても高い効果が望めない、ここは紙媒体を選択すべきです。

作成の際には来場者の目線になり、つい足を運びたくなるような内容を掲載しましょう。手に取って目に留まるように、目立つデザインにすることも重要です。

ステップ3:地域への案内

チラシが用意できたら、新聞の折り込みやポスティングなどで地域住民に案内していきます。

その場合はただやみくもに、広範囲に案内すればいいというものではありません。事業計画におけるクリニックの診療圏を考慮し、配布エリアを絞ってコストを抑えることも考慮すべきです。

お世話になっていた総合病院や友人医師・大学の上司などのネットワークでの周知も効果的です。大々的な宣伝活動は控えるべきですが、ちょっとしたチラシなら貼ってくれる総合病院もあります。

ステップ4:スタッフの確保と配置

内覧会の当日は、実際の診療と同じ体制で来場者を迎えるべきです。スタッフも本番さながらに配置して対応できると、来場者のクリニックに対する安心感が生まれます。

一般的に内覧会は長丁場になるため、スタッフは診療とは違った緊張感を覚えるかもしれません。来場者に疲れた顔を見せないよう、時間配分も考慮してスタッフを配置することも大切です。

ステップ5:開催直前の準備

当日は遅くとも開始1時間前にはスタッフ全員が集合し、改めてそれぞれの役割を確認します。クリニック内部や周辺の清掃やポスターの掲示、配布用チラシの準備など、直前にやるべきことは意外と多いものです。受付に芳名帳やノベルティグッズなども準備しておくと、スムーズに対応できます。急な天候の変化に備えて、マットや傘立て、傘袋、タオルなども準備しておきましょう。

意外と忘れがちなのがスタッフへの配慮。来客が集中すると対応に追われて休憩や食事といったリラックスできる時間がなくなることもあります。ご挨拶・ご案内とも立ったまま行う場合が多いので、肉体的な疲労もかさみがち。適度に交代しながら休憩をとれるようスケジュールを組んでおきましょう。スタッフの分も食事やドリンクの準備があると喜ばれるだけでなく、より一層丁寧な来客対応が期待できます。スタッフ一丸となって内覧会を成功させるためにも、細やかな配慮を忘れないようにしましょう。

準備が整ったら、あとは来場者を迎えるだけです。院内を案内しながら診療内容などを説明し、質問があれば丁寧に回答する、そんなイメージトレーニングを済ませておくこともおすすめします。

ステップ6:開催後のお礼

当日いらしてくださったお客様へ御礼文をお送りするのもよい方法です。とくに高齢の方には見えづらい・聞こえにくいといった点からメールや電話が苦手な方は多く、はがきや手紙といった古典的なご挨拶は好印象で覚えてもらえます。

お世話になった上司や同僚にはタイミングを見て挨拶に伺いましょう。先方もお忙しいので無理に訪問せず、御礼文やメールで「ひとまずのご挨拶」が邪魔にならずよい挨拶といえます。

内覧会の注意点

内覧会の失敗は、開業後の経営にも悪影響を及ぼす可能性があります。そうならないよう、内覧会におけるいくつかの注意点をお伝えします。

関係者向けのレセプションと混同しない

内覧会は地域住民へのプロモーションを通じて良好な関係を構築し、開業後の集患につなげるためのイベントであり、医療関係者や取引業者に向けたレセプションではありません。それを混同して同日に開催すると、関係者への対応に追われるあまり、一般来場者とのコミュニケーションがないがしろになってしまいます。

来場者にクリニックを直接アピールすることを最優先に考え、関係者向けのレセプションは日時を改めて開催すべきです。

当日のお手伝いはカジュアルな服装で

関係業者や友人が内覧会のお手伝いを買って出てくれることがあります。その気持ちはとてもありがたいのですが、格式ばったスーツで来られると内覧会が堅苦しい雰囲気になってしまうことがあります。

来場者の「気軽に通えるクリニック」というイメージを損ねるのは避けたいところです。お手伝いの方にはカジュアルな服装で来てもらえるようにお願いし、明るく和やかな雰囲気の内覧会を目指しましょう。

来場者にネガティブな印象を与えない

わざわざ足を運んでくれた来場者一人ひとりに丁寧な接遇を心がけることはもちろんですが、ネガティブな印象を与えるような言動は絶対に慎むことが大切です。たとえ来場者が少なくてスタッフが暇を持て余してしまうような状況でも、私語で盛り上がるなどはもってのほか。そういうところを来場者は見ています。

「お困りのことがあったら、いつでも相談してください」といった声かけを行なうなど、好印象を持ってもらえるような対応が開業後の集患につながります。

【まとめ】クリニック開業時の内覧会は開催すべき?

内覧会の必要性や準備についてお伝えしてきましたが、特に集患の効果が期待できることから、クリニック開業時には是非とも開催したいイベントです。地域住民にクリニックのコンセプトや診療内容を現場でアピールできる機会は、内覧会をおいてそうそうないからです。

ただし、地域性や診療圏の広さによっては、せっかく内覧会を開催しても来場者が少なかったり、その後の集患につながらなかったりする可能性もあります。それでは意味がありません。企画にあたっては、豊富な知識と経験を持つ開業コンサルに相談し、確実な集患手段として期待できるかどうかを見極めた上で判断すべきです。内輪だけの記念イベントになってしまわないよう、しっかり準備を進めていきましょう。