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共同経営クリニックの開業

1人でクリニックを開業するのは心細いけれど、気心の知れた仲間と開業できるなら安心、そう考えるドクターも多いかもしれません。

確かにクリニックの共同経営には多くのメリットがありますが、デメリットも少なくありません。共同経営での開業を検討する場合は、後でトラブルにならないようにデメリットもしっかり把握しておくことが重要です。

クリニックを共同経営で開業することは可能?

結論から言うと、クリニックを共同経営で開業することは可能です。資金の供出や仕事の役割分担、決定権、報酬などの面でお互いに納得できれば特に問題はなく、1人で開業するよりも医療の提供の幅は広がると思われます。

ただし、個人開業の場合は共同経営だとしても医療法上の管理者、つまり院長になれるのは1人だけです。銀行口座の開設や不動産等の賃貸借契約、医療機器の購入やリースも院長の名前で手続きが進みます。それでも報酬や税務申告を分ければ、実質的にはクリニックを共同経営していることになるでしょう。

複数医師でクリニックを共同経営するメリット

採用コストをかけず医師を確保できる

第一のメリットは、共同経営なので当たり前の話ですが、単純に医師を確保できるということです。

専門の医師紹介会社を通じて採用すると理論年収の20~30%程度の紹介料を要するため、300~400万円を超える採用コストがかかることも珍しくありません。共同経営であれば少なくとも2人は医師を確保できていることになりますから、結果として採用コストを大きく軽減できます。

医師のスキルや人となりを知ったうえで開業できる

良く知る医師と共同経営で開業するメリットとして、その医師の「スキルや人となりがわかっている」ということがあります。

知識や技術、スタッフとのコミュニケーション、診療方針、患者からの評判に加えて、その医師が考えている将来的なライフプランなど、一緒に働く「相棒」の人物像を知ったうえでクリニックの方向性を検討していけるのは非常に大きなメリットです。

良きビジネスパートナーになり得る

医師1人で開業するクリニックが圧倒的に多いなか、経営面や人事面について相談できる相手がいるのは本当に心強いものです。専門分野が異なる医師であれば、診療面でお互いに補い合うこともできるでしょう。

本当の意味でのビジネスパートナーとして共同開業するのであれば、開業費用を一緒に負担したり、連帯保証人になってもらったりすることで事業規模を大きくすることも可能です。

回転率アップ・診療時間の拡大が可能

医師が2人いる場合、クリニックが好立地でマーケティングがしっかりしていれば、単純計算上は2倍の患者さんを診られることになり、診療の回転率は大幅に上がります。診療時間の拡大も可能になり、勤務時間を分担できれば夜間診療や休日診療の導入も検討できます。

もちろんスタッフ確保の問題もありますが、回転率アップや診療時間の拡大は患者さんの離脱防止にも役立ち、売上アップにつながっていくでしょう。

診療範囲の拡大

診療範囲を拡大できるのも共同経営のメリットです。たとえば自身の専門分野が内科だとした場合、心療内科や整形外科といった領域はなかなかカバーしきれません。ですが、専門分野が異なる医師と共同経営できれば複数の診療科を標榜でき、それだけ多くの患者さんを受け入れることができます。

また、小児科とアレルギー科・耳鼻咽喉科、糖尿病内科と腎臓内科・眼科のように親和性の高い診療科の組み合わせは、経営面でも高い相乗効果を生むでしょう。

急な体調不良でもクリニックを休みにしないで済む

クリニックに医師が1人しかいない場合、もし急に体調を崩してしまったら休診にせざるを得ません。ですが、共同経営であれば1人が体調不良で離脱してもクリニック自体は診療を続けられます。

特に開業したばかりの時期に休診が続くと、その後の集患に大きく響いてしまいます。たとえ1人が体調を崩してもクリニックを開けられる共同経営の体制は、経営面で大きなリスクヘッジになります。

複数医師でクリニックを共同経営するデメリット

開業当初から高額な人件費がかかる

医師が複数いる以上、当然ながら相応の人件費がかかります。1人で開業するなら、たとえ患者さんが少なくても自分の収入にしか影響がありませんが、共同経営の場合なら話はそう単純ではありません。基本的には毎月一定の報酬を支払わなければならず、どうしても支出は増えます。

経営が軌道に乗る前で厳しい時期、共同経営の相手が報酬減額に合意してくれれば助かりますが、そうでなければクリニックが経営難に陥るリスクがあります。

意見のぶつかり合いが起きる可能性がある

クリニックの共同経営者が存在する以上、経営方針や診療方針の違いが問題になる可能性はゼロではないでしょう。意見のぶつかり合いが経営的な意思決定を遅らせ、最悪の場合はクリニックの分裂に至るかもしれません。

どれだけ気の知れた相手であっても、共同経営でクリニックを開業する場合は方針の違いが問題になる可能性も想定しておくべきです。

報酬の配分でトラブルが起きる可能性がある

クリニックに複数の医師がいる場合、それぞれの貢献度を正確に把握して報酬に反映させるのは非常に困難です。勤務時間数の違いはもちろん、たとえば担当した患者さんも初診か再診かによって診療の労力が異なると見れば、貢献度の指標も絞り込みにくくなってくるでしょう。

このように、貢献度に対する考え方の違いによって報酬の配分でトラブルが起きる可能性があるのは共同経営のデメリットといえます。

仕事量に不満が出る

報酬の配分と同じく、仕事量のバランスが悪くなると不満も生まれやすくなります。特に患者さんからの人気が偏ったりすると、自分だけ休暇を取りにくい、自分だけ残業が多いという状況にもなりかねません。これは共同経営者同士の関係悪化にもつながります。

クリニックの共同経営には、仕事量の違いによる不満が出てくる可能性があることもデメリットとして覚えておきましょう。

まとめ・共同経営クリニックを成功させるには

共同経営によるクリニックの開業にはメリットもデメリットもあり、それは気の知れた医師仲間と開業する場合であっても同じです。特にクリニックのオープン時は何かと慌ただしい日々を送ることになりますが、それでもこまめにコミュニケーションを取りながら問題を共有、解消していかなければなりません。

前述のように、報酬の配分などトラブルが起こりやすい部分は事前によく相談し、口約束ではなく書面に残しておくことが重要です。共同経営の相手が大切な友人ならなおのこと、後になって「言った言わない」の話になったりするのは避けたいところでしょう。

もしクリニックの共同経営に不安があれば、さまざまなケースを手がけてきた経験豊富なクリニック開業コンサルに相談するのも一手です。