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クリニック開業に必要な土地の広さ・坪数

クリニックの開業を検討する場合、成功させるための大きなポイントとして多くのドクターが「立地」を挙げるでしょう。

確かに「どこに開業するか」という問題は非常に大切ですが、どのくらいの広さの土地や建物が必要なのかも重要なポイントです。クリニックは法令によって建築の基準が定められており、それをクリアすることはもちろん、診療科によっても必要なスペースは変わってきます。

当然ながら、土地や建物が広いほど開業資金も高額になります。それを考慮しつつ、診療科ごとにどのくらいの広さが必要なのかを考えてみましょう。

診療科別に見る必要な土地の広さ・坪数

内科を開業する場合

もっともポピュラーな診療科といえば内科でしょう。「どうも体調がすぐれない」といった漠然とした症状で受診する人も多い診療科です。

特に一般内科であれば汎用的な診療がメインであり、専門的な治療は他の診療科に紹介することも多くなります。したがって、特別な医療機器を必要とするケースはあまりありません。診察室や処置室、レントゲン室、待合室、トイレ、受付、バックヤードなど最低限のスペースが確保されていれば開業は可能です。必要坪数の目安としては、30~40坪程度でしょうか。

ただし、同じ内科でも消化器内科であれば内視鏡の設備はほぼ必須といえますし、検査で下剤を飲む患者さんのためにトイレの数を増やす必要があります。そうなると、一般内科よりも広いスペースを見込んでおかなければなりません。

外科を開業する場合

外科は手術を行なうことを前提とするため、手術室や機材の保管スペース等を確保する必要があります。どんな手術を行なうのかにもよりますが、一般内科に必要な広さに加えて手術のためのスペースが必要と考えて差し支えないでしょう。

日帰りで受けられる比較的簡単な手術を行なうクリニックであっても、40~60坪程度は見込んでおいたほうが無難です。

整形外科を開業する場合

整形外科の場合は診察時にベッドを使うほか、車いすの患者さんも多いので、診察室や待合室だけではなくどのスペースも他の診療科に比べて広くなりがちです。また、リハビリテーションを行なう場合はそのスペースも必要です。診療報酬上の「疾患別リハビリテーション」の施設基準を届け出る場合は、最低でも45㎡以上のリハビリテーション室を設けなければなりません。

このような諸々の条件を考慮すると、少なくとも70坪程度の広さを確保したほうがいいでしょう。

眼科を開業する場合

眼科クリニックの開業は、手術を行なうかどうかで必要なスペースは大きく変わります。

コンタクトレンズの処方などがメインで手術を行なわないのであれば、30~40坪程度で十分でしょう。白内障などに対する日帰り手術を行なう場合は手術室が必要になるため、諸々の付随スペースも含めて45~60坪程度を見込んでおくべきです。

皮膚科・美容皮膚科を開業する場合

保険診療のみの皮膚科であれば、25坪程度のコンパクトなスペースでも開業は可能です。ただし、自由診療を行なう美容皮膚科を併設する場合には相応の広さが必要です。

美容皮膚科は基本的に個室の施術室が必須です。患者さんのプライバシーを確保するために待合室や動線に配慮すると、少なくとも50坪程度の広さは必要ではないでしょうか。

耳鼻咽喉科を開業する場合

耳鼻咽喉科では専門的な検査や処置が行なわれますが、大型の医療機器を必要とする治療は少なく、それほど広いスペースは必要ありません。30~40坪程度の広さでも十分です。

しかし、手術を行なうのであれば相応のスペースが必要になるのは眼科等と同じです。

小児科を開業する場合

小児科の場合、診察室や処置室等にはそれほど広さを必要としませんが、問題は待合スペースです。基本的には保護者が一緒に来院しますし、キッズルームや授乳スペースなどを設けることを想定すると、どの程度の広さを確保すべきかが考えどころです。

婦人科を開業する場合

婦人科のクリニックであれば、専門的な処置スペースも含めて45坪程度で十分でしょう。産科を併設する場合は大きく事情が異なり、分娩室や新生児室、そしてお母さんの入院施設も必要なため、少なくとも200坪程度は見込んでおく必要があります。

また、産科併設の婦人科で不妊治療も行なう場合は特に配慮が必要です。診療スペースはもちろん待合室やトイレ、導線の分離など、患者さんのプライバシーを確保できるだけの広さを見込んでおきましょう。

心療内科・精神科を開業する場合

心療内科や精神科は医療機器を使用するケースが少なく、診療はドクターと患者さんとのマンツーマンの対話がメインです。患者さんの心理を考慮すると待合室もコンパクトにし、予約制で来院時間を分けたほうがいいでしょう。

したがって、心療内科や精神科に広すぎるスペースは不要です。15~30坪程度のスペースで十分に開業できます。

まとめ

クリニックの開業に必要な土地・建物の広さを診療科ごとに説明してきましたが、診療圏の広さや診療内容、導入する医療機器に加えて、資金面の制約によっても最適な坪数は変わります。

どのくらいの広さが必要なのか、ざっくりとした目安をつけることすら難しい場合もあるでしょう。ドクター1人だけで悩まず、専門的な知見を有するクリニック開業コンサルに相談するのがおすすめです。