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北海道で眼科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、眼科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
眼科は老若男女を問わず、幅広い年齢層をターゲットにできるのがメリットです。小学生ならプール授業などで結膜炎が多くなりますし、高校生からはコンタクトレンズの処方が増えてきます。高齢者は高い確率で白内障を発症しますし、さらに眼鏡の需要は幅広い年代にあります。家族単位で患者さんを取り込みやすいように、住宅地エリアでの開業が狙い目かもしれません。
ただ、眼鏡の処方や結膜炎などは利益が少ないので、若年層よりもさまざまな眼のトラブルを抱えがちな中高年世代を重視したほうがよさそうです。開業予定地の年齢分布調査など、綿密なマーケティングが眼科という診療科のメリットを活かすことにつながるでしょう。
クリニックの開業を検討する場合、コンセプトを先に決めてから開業エリアを選択するのか、エリアのニーズに合わせたクリニックの運営を行なっていくのか、そこはドクターの自由です。しかし、眼科は都市部や商業エリア、人口密集地域では競合先が非常に多く、そこは北海道も同様です。古くからある住宅街には高い信頼を集めている老舗の眼科クリニックが存在することも多く、そこに切り込んでいくなら強力なライバルとなるでしょう。
地域住民が求める眼科医療に基づいた経営戦略を打ち立て、独自の特色を前面に出していかなければ経営を安定させるのは難しいといえます。
眼科の成功事例でしばしば挙げられるのが白内障の日帰り手術ですが、最近では自由診療の視力矯正に特化しているクリニックも多くなっています。自由診療に特化すると治療費や保証機関なども独自に決められますし、多額のマーケティング費用を投入して開業当初から多くの患者さんを受け入れている事例もあります。
特にレーシックや眼内コンタクトレンズは若年層に注目されていることから、マーケティングが上手くいけば分院展開など経営拡大路線に踏み出すことも可能でしょう。
眼科クリニックの開業が失敗してしまう原因で特に多いのは、開業時の過剰投資です。眼科以外の診療科にもいえることですが、その中でも眼科は日進月歩の勢いで技術が進歩している医療分野だといえます。したがって、開業時に医療機器などに思い切って過剰な投資をしても、患者さんが集まり出した数年後には診療に支障が出てしまう可能性もあります。そうなるとどうしても資金面で苦しくなってしまいます。 過剰投資による失敗を犯さないためには、診療範囲をきちんと絞り込み、導入する医療機器を吟味して資金面の計画を立てることが大切です。
47都道府県の中でも突出した面積の広さを誇る北海道。札幌エリアへの人口集中化傾向と地域の医療格差が顕著なことが大きな特徴です。
特にへき地では将来的な人口減少を避けられないこともあり、民間のクリニックが新規に開業する事例はほとんどみられないようです。専門的な要素の強い眼科であればなおさらではないでしょうか。必然的に開業候補地は、ある程度以上の人口を擁するエリアが選択されると思われます。となると、ますます事前の診療圏調査が重要になってくるでしょう。
また、目に不安を抱える患者さんを受け入れることを考えると、クリニックのアクセス性も忘れてはならないポイントです。広く一般眼科診療を行なうのか、日帰り手術に特化するのか、それによっても考え方は変わります。さらに周辺の公共交通機関の状況や駐車場の確保、冬季の積雪の問題など、開業候補地の選択に関わるファクターには北海道ならではのポイントも数多くあります。
こうした諸々を踏まえると、ドクターが独力で開業地の決定までこぎつけるのはなかなか大変です。特に診療圏調査に関しては北海道の地域医療に精通した開業コンサルタントの力を借りて、集患に有利な開業地を見つけたいところです。
北海道には約2,700のクリニックが存在し、うち約230施設が眼科系クリニックです(2021年11月現在)。人口10万人あたりの眼科系クリニック数は全国平均の6.39施設に比較して4.48施設と、北海道は不足傾向にあります。
ただし、このデータは北海道全体の平均値であり、人口格差・医療格差が顕著な北海道の場合はエリアによって大きな偏りがあると思われます。
眼科は他の診療科に比べて、大きな季節変動がある診療科ではありません。統計的には新規開業を志すドクターの平均年齢は40代前半のようですが、実際に金融機関の融資を開業医が受ける場合は、45歳くらいが通常の条件で融資を受けられる年齢上限の目安とされているという話もあります。
前述のとおり、眼科は技術の進歩が著しい医療分野なので、次々に登場する医療技術を吸収していくという意味では若いうちに開業したほうがいいのかもしれません。
眼科クリニックの開業には、エリアにおける患者さんのターゲッティングが非常に重要です。一般眼科として広く浅く診療を行なっていくケースもあれば、近年ニーズが拡大している視力矯正手術や高齢者の白内障手術といった特定の分野に特化していくのか、そうしたクリニックのコンセプトの違いが収益性にも決定的な差をもたらしているようです。
眼科クリニックの初期投資は、極端な言い方をすると「いくらでもかけられる」といった面があります。それは、高度かつ高額な医療機器が多いことにもよります。とはいっても、前述のとおり開業時の過剰投資は禁物です。一般的な事例としてまとめるのが難しい診療科ではありますが、テナント開業でドクター1人、手術なしとして7,000万円程度の開業資金を見込んでおいたほうがよさそうです。
年収でいえば、眼科開業医の平均年収は3,000万円を超えているといわれています。その理由は高齢化社会における眼科ニーズの拡大があり、特に白内障は日帰り手術も可能になったことから患者さんの数もかなり増えています。コンタクトレンズを利用する人が大幅に増えているのも眼科医の年収アップに影響しているようです。
眼科クリニックは初期投資が高額になりがちなこともあって、開業時や患者数が安定するまでの間にはまとまった資金が必要になることも多いでしょう。 クリニック開業に関していえば、北海道はどちらかというと都市銀行よりも地方銀行や信用金庫のほうが、比較的フットワークが軽い印象があります。また、金融機関以外でも北海道医師会の「特約融資制度」などがありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
眼科領域では、日本眼科学会が認定する眼科専門医が広く知られています。この資格は広告も可能なので、開業時の集患にあたってはホームページなどで前面に打ち出すのも良いアピールになるでしょう。
クリニック開業の計画を進めるにあたって最初にやるべきことは、経営理念やコンセプトの確定です。そして開業時期や立地を決めていきますが、エリアを検討する際には必ず診療圏調査、競合調査を行ないましょう。眼科領域という大きな区分けだけではなく、どんな診療をメインにするかという注力領域の調査も計画を進めていく上で重要な判断材料になります。
当たり前の話ですが、眼のトラブルを抱えている患者さんが来院するのでバリアフリーは必須です。院内掲示の文字のサイズや位置、照明の強さや位置なども配慮しなければなりません。 また、眼科は検査室を中心に動線をつくっていく独特な平面プランになりますので、経験のある設計士に依頼したほうがいいでしょう。
眼科クリニックの場合、他の診療科と違うのは視能訓練士の採用が必要なところです。ただ、視能訓練士は国家試験の合格者が少なく、エリアによっては採用に苦労する場合もありそうです。北海道の場合はなおさらそうかもしれません。
また、開業にあたっては行政に提出するさまざまな申請書類を作成しなければなりません。この作業には専門的な知識も必要なため、開業準備に忙しいドクターが手がけるのは困難でしょう。とはいっても、手続きが遅れると開業スケジュールにも影響するため、そこは経験豊富な開業コンサルタントに任せたほうが無難です。
さまざまな難関を乗り越えて行き着いた新クリニックのオープン、ドクターの喜びもひとしおでしょう。ただ、すぐに多くの患者さんが来てくれるということはなかなかありません。 日々の診療の成果である診療報酬の入金は、2カ月後から始まります。それまでの間は無収入でも運営できるように、財務的な余裕を持ってクリニックをスタートさせることが大切です。