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クリニック開業とオンライン診療

新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとして、オンライン診療のニーズは以前よりも格段に高くなりました。自由診療をオンラインで行なうクリニックも増えつつあり、これから開業を予定しているドクターにも検討している方がいらっしゃるでしょう。

ここでは、クリニック開業当初からオンライン診療の導入を検討する場合に気をつけておきたいポイントを紹介します。

オンライン診療とは

スマートフォンやタブレットなどのビデオ通話を活用することで、患者さんが来院せずに診療できるのがオンライン診療における最大メリットであり、かつ基本的なスタイルです。

新型コロナウイルス感染症流行のさなかにあった令和4年1月には厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が改訂され、初診からオンライン診療が可能になるなど大幅な規制緩和がなされました。幅広い年代にビデオ通話が普及したことも相まって、オンライン診療のハードルは大きく下がったといえるでしょう。

最近では、医師求人サイトでもオンライン診療のアルバイト募集を多く見かけるようになりました。

オンライン診療によるさまざまな開業スタイル

オンライン診療専門クリニック

まだまだ一般的ではありませんが、オンライン診療専門クリニックは自由診療だけではなく、保険診療でも増えつつあります。最大のメリットは初期投資を大幅に抑えられることで、自治体の判断にもよりますが大きな医療設備を持たなくても開業が可能です。ただし、厚生労働省が定めるオンライン診療の施設基準は「対面診療を提供できる体制を有すること」を条件としているため、単にマンションの一室にビデオ通話の設備をそろえるだけで開業できるわけではありません。

オンラインによる医療健康相談サービス

ビデオ通話やチャットなどを利用し、オンラインで医療健康相談を提供するサービスです。あくまでも「相談」であって診察・診断ではないため、極端にいえばスタッフがいなくても開業は可能で、いわゆるクリニック開業とは少々かけ離れた事業です。

通院診療とオンライン診療の併用

現実的なのは、対面診療を行なう一般的なクリニックを開業してオンライン診療を併用するスタイルでしょう。上記の医療健康相談サービスも一緒に提供可能です。自身が理想とする働き方に合わせて、提供する医療サービスの組み合わせ、業務バランスを考えることをおすすめします。

オンライン診療を実施できる条件

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」には、オンライン診療の実施にあたって必ず守るべきルールが示されています。

診療計画書の作成

オンライン診療には計画書の作成が義務づけられており、オンライン化する診療科の詳細や対面診療に移行する判断基準、急変時の基本的な対応方針、セキュリティリスクに関する責任の範囲など、さまざまな内容を記載する必要があります。

診療計画書の共有

オンライン診療の計画書は、患者さんに対して文書または電子データで共有することが理想ですが、口頭で伝えることも可能です。それに患者さんが合意しなければオンライン診療は実施できません。

本人確認

オンライン診療の大きなリスクのひとつが「なりすまし」ですが、これは医師にも患者さんにもいえることです。医師の本人確認では、顔写真付きの身分証明書で患者さんに氏名を明示することが求められ、患者さん側も同じように顔写真付き身分証明書を画面に提示するか、二段階認証などのセキュリティ対策がなされたオンライン診療システムの使用が推奨されます。

薬の処方と管理

オンライン診療では触診などが不可能なため、薬の処方に際しては対面診療よりもさらに慎重な判断が求められます。薬を処方した場合は、当然ながらその後のフォローアップを行なう責任も生じます。また、一部の向精神薬や麻薬性鎮痛薬など、特定の薬剤はオンライン診療で処方することはできません。

その他

オンライン診療は、患者さんの医学的情報を十分に得られている状況でこそ実施を検討すべきものであり、現実的には対面診療との併用が望まれる診療スタイルです。

また、オンライン診療を実施する医師は、保険診療、自由診療に関わらず厚生労働省が定めるオンライン診療研修を受講する必要があります。

オンライン診療の課題

オンライン診療の普及によって医療提供サービスの幅が広がったのは喜ばしいことですが、その反面、難しい課題を抱えているのも事実です。

収益性が低い

オンライン診療は対面診療に比べて診療報酬が低く設定されており、収益性が低いのが問題といえます。とはいえ、令和4年度診療報酬改定ではオンライン診療の点数が引き上げられ、対面診療との差は縮まっています。

対応できない病気がある

オンライン診療で得られる情報は患者さんの自覚症状が主になるため、詳細な診察・診断は困難です。頭痛や腹痛、胸痛といった急性症状の場合や、定期的な検査が必要な病気はオンライン診療では対応できません。

オンライン診療でも頼れるクリニック開業コンサルタント

オンライン診療に精通しているクリニック開業コンサルタントなら、導入を検討する際にさまざまな相談に乗ってくれるでしょう。

法的アドバイスと規制遵守

オンライン診療には前述の厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」のほか、さまざまな法的規制が存在します。クリニック開業コンサルタントは関連法規に精通しているので、オンライン診療の実施にあたってクリニックがコンプライアンスを逸脱しないようにアドバイスできます。

プラットフォームの選定と導入サポート

現在は多くのオンライン診療のプラットフォームがリリースされており、コストや機能面、連携可能なサービスなどにおいてそれぞれ特徴があります。クリニック開業コンサルタントは予定するオンライン診療の実施内容から適切なプラットフォームを選定するためのアドバイスを行ない、導入をサポートしてくれます。

患者データのセキュリティとプライバシー保護

オンライン診療は患者さんの情報を院外とやり取りすることになるため、セキュリティとプライバシー保護には特に配慮しなければなりません。クリニック開業コンサルタントは個人情報保護法や医療データのセキュリティ、プライバシーに関する法規制にも精通しており、その遵守に向けたガイダンスを提供し、適切なデータ管理についてアドバイスを行ないます。

マーケティング戦略の策定

マーケティングはクリニック開業コンサルタントの専門分野のひとつですが、それはオンライン診療でも同様です。クリニックで実施しているオンライン診療を診療圏に普及させるため、マーケティング戦略の策定や効果的なデジタル広告についてアドバイスしてくれます。

業績評価と改善策の提案

クリニックの業績を月次ごとにモニタリングし、オンライン診療の収益が芳しくないようなら、それを拡大させるための改善策を提案します。

まとめ

想像を超えるスピードで医療DXが進んでいる現在、望むにしろ望まないにしろ、クリニック開業にあたってオンライン診療の導入は検討せざるを得ない状況です。

ただ、オンライン診療にはクリニック、患者さんともにさまざまなメリットがあります。この新しい技術を活かすことがクリニックの成功につながるのであれば、ぜひ前向きに考えてみるべきでしょう。