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透析クリニック・透析内科の開業

北海道で透析クリニック・透析内科を開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。

このページでは、透析クリニック・透析内科の開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。

透析クリニック・透析内科を開業するメリット・デメリットは

まず、透析クリニック・透析内科を開業するメリット・デメリットについて、いくつかの視点から考えてみましょう。

メリット

日本透析医学会の調査によると慢性透析患者は年々増加傾向にあり、近年は伸びが鈍化しているとはいえ、2021年末現在で約35万人が人工透析を受けています。その背景には糖尿病患者の増加があり、新たに人工透析を開始する患者数も年間4万人を超え、継続的な通院患者を確保できるという意味では安定経営が見込める診療科です。

また、いったん透析を受け始めた患者さんは、よほどのことがない限り他のクリニックに流れることはないのもこの診療科のメリットといえるでしょう。

※参照元:一般社団法人日本透析医学会「2021年末の慢性透析患者に関する集計」(https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html)

デメリット

透析クリニックは相応の設備投資に加えて広いスペースも確保しなければならず、通院の利便性に考慮した好アクセスな立地に開業することも考えると、どうしても初期費用は高額になります。

一方、透析の新規導入年齢は高齢化しており、従来からの高齢化社会の影響も相まって透析患者数が減少に転じるのは遠い先の話でもなさそうです。そうなると、競合先との患者確保競争はより厳しくなるでしょう。また、透析医療に対する診療報酬のマイナス改定も経営に大きく影響すると思われます。

成功する開業と失敗する開業とは

次に、透析クリニック・透析内科の開業を成功に導くポイント、逆に失敗につながってしまうようなポイントをみていきましょう。

成功しやすいポイント

上記のとおり、透析患者さんの高齢化が進んでいるので、足が弱っても通院しやすいクリニックや、送迎サービスを実施しているクリニックは選ばれやすいと思われます。他の医療機関にとっても、透析が必要な患者さんを紹介する際はアクセス性の高いクリニックを優先するでしょう。仕事をしている患者さんには、夜間・休日の透析対応が可能なクリニックも重宝されます。

また、透析は時間がかかるため、患者さんにとって居心地のいいクリニックは成功しやすいはずです。疲れにくいリクライニングベッドや、フリーWi-Fi、テレビモニターなどの設置も集患効果を高めます。

失敗しやすいポイント

初めて透析を導入する患者さんは他の医療機関からの紹介が多いと考えられるため、他院との連携をおろそかにするのは問題です。前述の「成功しやすいポイント」に挙げた条件を満たしていないだけではなく、患者さんを紹介してくれそうな医師とのコミュニケーションが上手くいかなくても患者さんは増えず、開業が失敗に終わる可能性が高くなります。

また、透析クリニックは初期投資が高額になりがちとはいえ、あまりに過剰な投資は資金繰りの悪化につながります。開業当初は必要最小限の設備・人的投資に抑えなければ、経営が軌道に乗る前に閉院に追い込まれるかもしれません。

透析クリニック・透析内科での開業のタイミング

透析クリニック・透析内科は、診療内容からみて患者さんの季節変動は起こりにくいと思われます。そういう意味では開業のタイミングにこだわる必要はないかもしれません。

ただし、元の勤務先から担当患者さんを連れて開業するような場合は、円満に退職できるタイミングを慎重に計るべきです。今後も患者さんを紹介してもらえるような良好な関係を維持したまま開業できるのが理想的です。

透析クリニック・透析内科のクリニック開業動向情報

北海道で成功している透析クリニック・透析内科に共通するのは、ターゲットとなる患者さんを明確にするとともに他の医療機関との連携を強固にし、強みをしっかりアピールしていることです。腹膜透析や在宅透析、シャント造設の対応が可能なクリニックも多く、症状が重い患者さんの受け入れに積極的なクリニックも存在します。

また、患者さんを紹介されるばかりではなく、状態が悪化した患者さんを高度医療機関に紹介するケースもあります。北海道では冬期の交通事情が良くないこともあり、地域の中核病院へのアクセスが容易な立地に開業する傾向が強いように思われます。

開業資金や年収/月収

テナント開業か戸建て開業か、クリニックの形態によっても事情は異なりますが、いずれにしても透析クリニック・透析内科は一般内科よりも広いスペースが求められます。加えて透析機器やベッド、透析に必要な超純水装置や検査機器を設置するための内装工事も必要なため、1億円以上の開業資金を要するケースも少なくありません。開業当初はできるだけ設備投資を抑え、経営が軌道に乗ってから拡大していくという視点も必要です。

透析の開業医の年収に関する統計データ等は存在しませんが、少なくとも勤務医よりは高収入を望めるようで、2,000~3,000万円程度が相場という見方もあります。ただし、患者数によって年収も大きく変動するでしょう。

開業時や収益が不安定な時期にまとまった資金が必要になった場合

透析クリニック・透析内科は開業資金が多額になりがちなことに加え、患者さんが少ない開業当初にもまとまった運転資金が必要です。金融機関から融資を受けるケースが多いと思われますが、北海道医師会に加入していれば「特約融資制度」も利用できます。資金調達をすべて金融機関に頼るよりも有利な条件で融資を受けられる可能性があるので、検討してみてはいかがでしょうか。

※参照元:北海道医師会公式ホームページ「北海道医師会のススメ」[PDF](http://www.hokkaido.med.or.jp/about/pdf/nyuukainoshiori.pdf)

開業までの流れ

実際に透析クリニック・透析内科を開業する場合、どのようなプロセスを経て開業に至るのか、必要な作業やクリアすべき課題について一連の流れを紹介します。

開業プランの検討

透析クリニック・透析内科に限りませんが、クリニック開業の第一歩は診療方針やコンセプトを固めることです。特に透析のような医療領域は専門性が高いこともあり、クリニックの方針やコンセプトが確立されていないと事業計画も資金計画も脆弱なものになってしまうでしょう。

開業までのスケジュールとしては、立地・物件の選定から実際のオープンまで少なくとも1年の準備期間を見込んでおくべきです。内装工事や設備導入などにどの程度の時間がかかるのかをあらかじめ把握しておき、オープン予定日から逆算して大まかなスケジュールを組んでいきます。

具体的なプランの検証

診療方針やコンセプト、大まかなスケジュール等が固まったら、それを具体的な事業計画に落とし込んでいくプロセスへと移行します。診療圏調査や開業資金の試算を綿密に行なって実現性の高い事業計画を作成することが肝要であり、特に金融機関から資金を調達する場合は事業計画の内容が融資の可否を大きく左右します。

こうした作業には専門的な知識も必要なため、医師だけでこなすのは非常に困難です。開業コンサルなど専門家のサポートを受けるのが望ましいでしょう。

設備の選定や内装業者との打合せ

次に、事業計画に基づいて設備の選定や内装レイアウトなどを検討します。

透析クリニックの場合は、一般的な内科クリニックのフロアに加えて透析ベッドや関連機器の設置に要するスペースも確保しなければならず、患者さんやスタッフの動線にも十分に配慮しながらレイアウトを決めていく必要があります。透析患者さんは高齢化が進んでいるので、バリアフリーなど利便性にも着目すべきなのは言うまでもありません。

クリニックの準備と各種申請

開業予定日の概ね3カ月前には、オープニングスタッフの募集や採用面接を行ないます。また、内装工事の完了と医療機器の設置が済んだら写真を撮影し、ホームページの作成にも取りかかります。

開業に際しては行政に対する各種申請が不可欠ですが、万が一不備があると予定どおり開業できない場合もあります。この手続き等も経験豊富な開業コンサルに任せたほうが無難です。

開業

待ちに待ったクリニックのオープン、その日から医師だけではなく経営者としての人生もスタートします。

すぐに多くの患者さんが来てくれるに越したことはないのですが、なかなかそうはいきません。診療報酬の入金は請求から2カ月後になるため、開業当初は無収入でもやっていけるように余裕のある運転資金を確保しておくことが重要です。