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北海道で神経内科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、神経内科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
まず、神経内科でクリニックを開業するメリットとデメリットについて、さまざまな視点から考えてみましょう。
近年は医師の高齢化などに伴う慢性的な医師不足が問題となっているエリアも多く、北海道でも各地でそのような状況がみられます。それは神経内科も例外ではありません。
今後ますます進行していく少子高齢化社会を見据えた場合、脳神経系の疾患を抱える患者さんが増えることは明らかです。しかし、神経内科を専門とする開業医は少なく、必然的にニーズが高まる診療科だと考えられます。
神経内科の領域で在宅医療を受けている患者さんも多いので、訪問診療をメインとしたクリニックの開業も十分に検討できるでしょう。
神経内科は他の診療科よりも患者さんの認知度が低く、心療内科や精神科などと混同されるケースは決して少なくありません。また、多くの患者さんは「頭痛がするので神経内科を受診しよう」とはならず、風邪程度の頭痛なら内科クリニックを選択するでしょう。
診療圏の住民に専門性を理解してもらわなければ集患が難しい、というのは神経内科で開業するデメリットといえるかもしれません。
次に、神経内科クリニックの開業を成功に導くポイント、逆に失敗につながってしまうようなポイントを見ていきましょう。
前述のとおり神経内科は認知度が低いので、地域住民に向けて対応できる疾患を明確に発信することが不可欠です。近年では「頭痛外来」「物忘れ外来」など患者さんや家族が一目でわかるような専門外来を開設し、集患に成功している神経内科クリニックも多いようです。
また、リハビリ施設を充実させて脳卒中の入院治療を終えた患者さんを多く受け入れている神経内科クリニックもあります。特に脳血管系の疾患を抱える患者さんは退院後のリハビリのニーズも高いので、脳神経外科病院などとの連携を強固にしておけば患者さんの紹介も受けられるでしょう。
神経内科領域の疾患は、診断にCTやMRIといった高額な医療機器を要することがほとんどで、神経内科クリニックの初期投資が高額になりがちなのはそこが原因です。だからといって当然のように導入するだけでは、クリニックの経営が軌道に乗る前に資金繰りが厳しくなるかもしれません。
CTやMRIは患者さんが増えてからの造設でも間に合います。それまでは連携先医療機関などに撮影を依頼することで日々の診療を回し、無理な返済に苦しまないようにしましょう。神経内科に限りませんが、過剰投資は失敗のもとです。
患者さんの紹介が期待できる連携先医療機関の状況も踏まえながら開業時期を検討していくべきですが、もっとも紹介を期待できるのは開業前の勤務先ではないでしょうか。
そういう意味では、勤務先を円満に退職できるタイミング=開業のタイミングと考えるべきかもしれません。
神経内科は専門性の高い診療科で、一般内科よりも診療圏を広く設定すべきです。そしてエリアの住民からの認知度を高めるため、北海道で開業している神経内科クリニックもさまざまな工夫を凝らしています。専門外来を前面に打ち出すほか、「○○病クリニック」のように受け入れる疾患をクリニック名にしているケースもあるようです。
また、診療圏が広いということは患者さんの交通手段にも着目しなければなりません。開業地や患者層から想定し、自家用車で通院する患者さんが多いと考えられる駐車場の確保も必要です。そして寒冷地ゆえの積雪問題も無視できません。
北海道内で近年開業している神経内科クリニックは、患者さんが無理なく通院できるようアクセス性も重視している傾向にあるのではないでしょうか。
前述のとおり、神経内科クリニックの開業資金はCT、MRIの導入有無によって大きく変わります。それらがないとしてもリハビリテーション施設などで相応のスペースや設備、人材の確保も必要です。少なくとも8,000万円程度の開業資金を見込んでおいたほうがいいでしょう。
次に年収ですが、神経内科の開業医としての平均年収のデータは存在しません。ただ、脳神経外科を併せて標榜する開業医が多く、同等の年収を得られると仮定するなら、開業医全体の平均年収を上回ると考えられます。
北海道では、クリニックの開業に限っていえば地方銀行や信用金庫が融資に積極的な印象があります。また、日本政策金融公庫の創業融資制度は金利も低く、有利な条件で資金を調達できることも多いようです。
とはいえ、資金調達に必要な事業計画書などをドクター1人で作成するのは現実的に難しいでしょう。経験豊富な開業コンサルなどの専門家にサポートを受けたほうが手続きもスムーズに進みます。
それでは、クリニックを実際に開業するまでどのようなプロセスを経ていくのか、必要な作業やクリアするべき課題について一連の流れをみていきましょう。
クリニックの開業準備において何よりも先に決めるべきことは、クリニックの診療方針やコンセプトです。これがなければ「どこに」「どんな」クリニックを開業するのかを明確にできず、事業計画の一貫性も損なわれてしまいます。
診療方針やコンセプトは、いわば開業医の理想を示したものです。これこそが開業プランの土台になり、そのうえにクリニックのイメージを形づくっていきます。
診療方針やコンセプトに基づく開業プランの検討が進んできたら、具体的な事業計画の立案と検証を行ないます。このプロセスにあたっては、開業予定地の診療圏調査や投資額の見込みなど、さまざまなデータに基づいて実現性の高い事業計画を立てることが大切です。特に金融機関から資金を調達する場合は、事業計画の出来次第で融資が決まるといっても過言ではありません。
こういった作業をドクターだけでこなすのは現実的ではありません。事業計画を立案していく段階からクリニック開業コンサルなどにサポートを依頼することをおすすめします。
高度な画像診断機器だけではなくリハビリテーション関連など、極端にいうと投資しようと思えばいくらでも投資できるのが神経内科の特徴ともいえます。それゆえ設備の選定は初期投資を抑えるうえで慎重になるべきです。
内装も必要以上にお金をかける必要はありません。衛生的で患者さんの動線、バリアフリーに配慮されていれば十分です。
遅くともオープンの3カ月前になったらスタッフの募集を開始しましょう。神経内科はリハビリテーションにも力を入れる必要があるので、専門的な知識を持つセラピストを確保できるのが理想的です。また、認知度の低い診療科であることから、ホームページなどの広告戦略も早めに打っておくべきです。
開業に伴う行政や監督官庁への申請・届出は、もし不備があると開業スケジュールにも差し障ります。そこは専門的な知見を持つクリニック開業コンサルなどに依頼したほうが安心できます。
開業医にとっては記念すべきクリニックのオープン日ですが、そこはあくまでもゴールではなくスタートです。そこから経営者としての人生が始まります。
診療の成果である診療報酬は、制度の都合で入金は2カ月後になります。特に神経内科は集患に時間がかかる場合も多いので、当面は無収入でもクリニックを運営できる程度の運転資金を用意しておくことが重要です。