公開日: |更新日:
北海道で整形外科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、整形外科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
超高齢化社会において、いかに健康寿命を延ばせるかは運動器の健康にかかっているといわれています。特に膝や股関節にトラブルを抱える患者さんは、平成の30年間で5倍以上に増えました。胸椎や腰椎などの椎間板障害も大幅に増加しています。
主に骨や関節、筋肉の疾患を取り扱う整形外科は、高齢者の増加に伴って重要性を増している診療科のひとつであり、整形外科クリニックのニーズもさらに高まることが予想されます。
他の内科系クリニックなどと同じく、整形外科クリニックの患者さんも高齢者がメインになります。しかし、スポーツ整形なども視野にいれると、若年層に至るまで幅広い年代層をターゲットにできる診療科です。
整形外科クリニックにはさまざまな医療機器が必要であることに加え、リハビリテーションにも力をいれるとなると相応のスペースも必要になります。リハビリスタッフや放射線技師などの専門職も採用しなければならないため人件費にも影響し、どうしても初期投資が高くなります。
その反面、整形外科は患者さん1人あたりの平均診療単価が低い診療科です。これは内科系クリニックとは違って定期的な検査を必要としないことなどが影響していると考えられます。したがって、1日あたりの患者数を他の診療科よりも多く診なければ採算が厳しくなってしまいます。
整形外科は開業医も多いため、すぐ近くに競合先が存在するケースも珍しくありません。ですが、ターゲッティングを徹底することで解決の道筋が見えるでしょう。
重要なのは、初期投資をかけすぎないことです。特に最初から多額のリハビリ用医療機器を取りそろえるのはリスクが高すぎます。リハビリは腕のいいセラピストと施術台だけでも十分に患者さんがついてきます。開業当初は必要最小限の設備投資にとどめ、患者さんが増えてきたら徐々に買い足していったほうが効率的で、経営的にも成功につながりやすいでしょう。
特に車社会の北海道では、自分で運転するにしても家族に送迎してもらうにしても自家用車で通院する患者さんが多く、整形外科クリニックでも同様です。運動機能が不自由な整形外科の患者さんならなおさらかもしれません。駅前などの一等地での開業にこだわり、駐車場からの距離や駐車台数の確保をおろそかにすると、患者さんが離れてしまう可能性が高くなります。
業者に勧められるままにクリニックモールで整形外科クリニックを開業し、通院の不便さから結局失敗してしまうケースというのは後を絶たないのです。
47都道府県の中でも最大の面積を有する北海道。九州と四国を合わせても足りないほどの広さを誇り、それゆえ医療の地域格差も他の都府県とは比較になりません。
北海道は人口の一極集中が顕著であり、札幌市を中心とした都市部に医療資源が偏る傾向にあります。そうした地域では診療科を問わず競合先が多くなり、いわゆるクリニックの激戦区と呼ばれるエリアが点在します。ドクターの専門性が高かったとしても、開業地次第では苦戦を強いられる可能性は十分にあります。
一方、都市部を離れた医療資源の少ない地方での開業は、きっと自治体からも住民からも歓迎されるでしょう。ただし、前述のとおり都市部以外の人口は年々減少していくことが見込まれるため、将来的な患者確保やスタッフ確保が困難になるかもしれません。
このような特性を持つ北海道で開業を検討する場合、なかなか候補地が決まらないケースが多くあります。また、近年では「関節外科」「脊椎外科」など専門特化を打ち出す整形外科クリニックが増えてきました。ドクターの専門性によっては、単に整形外科という括りだけでは競合先を踏まえた候補地の選定が難しいので、特性を打ち出す展開はとても有効です。加えて、寒冷地ゆえの積雪問題を含めたアクセス性も、運動器疾患を抱える整形外科の患者さんの立場では重要なポイントになります。
開業候補地を絞り込んでいくには、こうした多くの要因を考慮しなければなりませんが、ドクターだけでそれを判断するのは難しいでしょう。北海道の地域医療に精通した、経験豊富な開業コンサルタントのアドバイスを受けることも必要です。
北海道には約600の外科系クリニックが存在し、そのうち約200が整形外科を標榜しているクリニックです(2022年11月現在)。
ただし、このデータは北海道全体における数字です。医療格差・人口格差が顕著な北海道の場合、整形外科クリニックが集中しているエリアもあれば、新規開業の余地が残されているエリアもあるでしょう。
開業のタイミングや時季は、診療科によっては良し悪しがあります。整形外科の場合、一般的に寒い冬は患者さんが減るとされていますが、北海道の場合はそうとも限りません。冬道での転倒や交通事故が増えるからです。
特に骨折や捻挫など外傷の患者さんをメインに考えている場合は、雪のシーズンをめがけて開業するのも一手だといえるでしょう。
整形外科クリニックの開業資金は、リハビリの規模や手術の有無などによって大きく変わります。一般的に整形外科は治療や検査、リハビリに多くの医療機器を要するため、ハード面と合わせると7,000~8,000万円程度を要するのはざらにあります。他のクリニックとの差別化を図ろうとして大型医療機器を導入したりすると、軽く億単位の初期投資になるでしょう。
ただ、それに見合った年収を得られやすいのも整形外科クリニックです。統計データによると平均年収は3,000万円近くとなっており、他の診療科よりも高くなっています。これはもちろん相応の患者数が前提ですが、他にもリハビリテーションによる診療報酬を積み重ねることができることなども大きな要因だと考えられます。
整形外科クリニックは初期投資が多額になり、開業当初の患者さんが少ない時期にはまとまった運転資金が必要です。その場合は金融機関から融資を受けることを検討しますが、北海道医師会に加入していれば「特約融資制度」を活用することもできます。医師会からの貸出だけではなく、金融機関と契約もしているので有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
整形外科領域では、日本整形外科学会が認定する整形外科専門医が広く知られています。広告もできる資格なので、開業時までに取得しておけば患者さんにホームページなどでアピールすることもできるでしょう。
まずは経営理念やクリニックのコンセプト、開業時期を考えるところがスタートです。テナント開業であっても、物件の選定から開業までには少なくとも1年の準備期間をみておかなければなりません。
整形外科クリニックは競合先も多いので、他院との差別化もイメージしながらプランを練っていきましょう。
物件の候補が固まれば、次は導入する医療機器の選定や改修工事などに要する初期投資額の見込みを立て、その資金調達の手段を考えるなど、具体的なプランの検証に移っていきます。これらの作業は開業の半年前までに目処をつけておかなければ、スケジュール的にも厳しくなってしまいます。
地域の医師会や行政への事前相談もこのタイミングで行ないます。不安があれば開業コンサルタントの力を借りることも検討しましょう。
導入する医療機器や設備が決まったら、内装レイアウトを検討していきます。
整形外科クリニックの場合は、受付から直接リハビリに行く患者さん、レントゲン検査を受ける患者さん、初診で診察室に入る患者さんなど、診療メニューが多いため患者さんの動線も複雑になります。アクセス経路が明確になるようなレイアウトが望ましいのはもちろんですが、足腰に不安を抱えていたり車椅子や杖を利用したりしている患者さんのために、余裕のあるスペースやバリアフリーなど患者さんの利便性を考慮しましょう。
開業3カ月前を目処に、スタッフの募集や採用面接を進めていきます。職種に応じてハローワークや募集広告、求人サイトなどを使い分け、採用後は随時研修などを行ないます。
また、内装の完成と医療機器の設置完了を待って写真撮影を行ない、ホームページの作成にも取りかかります。
開業に際しては行政に各種申請を行なう必要があります。この手続きに不備があると予定どおりの開業ができなくなる可能性もあります。心配であれば開業コンサルタントなど専門家に任せるのが安心です。
ついに新クリニックのオープン、すぐに多くの患者さんが来てくれればいいのですが、なかなかそうはいきません。
診療報酬の入金は2カ月後からになりますので、最初は無収入でも問題ないよう運転資金に余裕を持たせておくことが大切です。