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北海道で心臓血管外科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、心臓血管外科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
まず、心臓血管外科でクリニックを開業するメリットとデメリットについて、さまざまな視点から考えてみましょう。
厚生労働省の統計を参照すると、心臓血管外科医の全体数が3,214人で、うち3,103 人が病院勤務、111人が診療所勤務と回答していることから、全体数の96.5%が病院勤務と推察できます(※)。そこには診療科の特性として高度かつ長時間に及ぶ手術を行なうこと、それに伴って大がかりな設備や熟練のスタッフを必要とすることなど、どうしても病院での治療が中心になるという事情があります。
そうなると開業は少数派ということになりますが、逆に心臓のことなら何でも対応できるクリニックというのは競合先が少なく、経営戦略的には大きな強みになると考えられます。
心臓血管外科を標榜して開業しても、病院と同水準の手術などを行なうのは現実的に困難なケースが多いでしょう。そうなると循環器内科との差別化が難しくなり、心臓疾患に対する特化した強みを打ち出すことができなければ競合先が一気に増加します。
循環器内科でも心臓カテーテル検査やペースメーカー埋め込みなどに対応する設備を有しているクリニックは多く、北海道内の都市部などで開業を検討する場合は相応の差別化戦略を打ち出していかなければなりません。
心臓血管外科クリニックの開業を成功に導くポイント、逆に失敗につながってしまうようなポイントを見ていきましょう。
心臓血管外科は循環器内科との差別化が難しい診療科です。クリニックの開業を成功に導くためには、しっかりしたマーケティング戦略を確立させることが大きなポイントになるでしょう。ホームページで専門性をアピールすることは必須であり、加えて心臓血管外科の対象疾患を解説するコンテンツを掲載するなど、患者さんにとって有用な情報を発信していくのもおすすめです。
また、当然のことながら患者さんが求めているのはスピーディーな診断と治療です。特に心臓疾患は生命にかかわる重篤なケースもありますので、可能な限り即日で精密な検査を実施して確定診断を伝えられるような診療体制を構築できれば、患者さんの評判を呼んで集患につながっていくと考えられます。
心臓血管外科の開業でもっとも気をつけたいのは、オープン時の過剰投資に代表される資金計画の脆弱さでしょう。どういった領域・疾患に対する強みを打ち出していくかなどクリニックのコンセプトが固まっていなかったり、開業エリアのマーケティングが不十分だったりすると非常に危険です。高い稼働が見込めないのに高額な医療機器や設備に投資してしまい、開業後の資金繰りに苦しむ可能性が高くなります。
CTや超音波検査装置など、心臓血管外科に必要な医療機器は数多くあり、ハイスペックな機種を導入したい気持ちになるかもしれませんが、開業当初の設備投資には慎重になるべきです。高額な医療機器を導入するのは、クリニックのオープン後に患者さんがつき始めてからでも決して遅くはありません。
以前の勤務先病院の近くに開業する、いわゆる「お膝元開業」を検討しているのであれば、そちらとのスムーズな連携もクリニックの成功に影響します。良好な関係を続けていくためにも、円満に退職できるタイミングを見計らって開業することをおすすめします。
心臓血管外科は専門性の高い診療科であるため、広いエリアからの集患を検討する必要があります。この場合、まず重視しなければならないのは患者さんの交通手段です。最寄駅から近いことも大切ですし、車社会の北海道では寒冷地ゆえの積雪問題も考慮しなければなりません。一定の広さの駐車場が確保できることも重要なポイントです。そうした部分も十分に考慮して開業地を選定していきましょう。
次にハード面の問題です。心臓血管外科を受診する患者さんは、当然ながら心臓疾患を抱える患者さんや高血圧の患者さんが多くなるでしょう。そのため、ストレスを感じにくい空間づくりが求められます。内装も同様で、奇抜なデザインは避けて落ち着いた雰囲気のクリニックを目指したいところです。高齢の患者さんも多くなるので、バリアフリー構造も必須と考えるべきです。
心臓血管外科は設備投資が高額になる傾向にあります。なるべく開業資金を抑えたいところではありますが、最低限必要な検査機器などはそろえなければなりません。たとえばテナント開業で心臓CT検査が可能な体制を整えるとすると、少なくとも1億円は見込んでおいたほうがよさそうです。
年収に関しては、心臓血管外科医としての平均年収を示す統計データは残念ながら見当たりません。ただ、提供する診療内容を考えると患者さんの平均単価は高いと思われますので、集患がうまくいけば開業医全体の平均を上回る年収が期待できるでしょう。
北海道の場合、いわゆるメガバンクよりも地方銀行や信用金庫のほうが、クリニックの新規開業の融資に積極的な印象があります。日本政策金融公庫の創業融資制度を利用するのも、金利面などで有利な部分が多いようです。
いずれにしても、資金調達に必要な書類をドクター個人で作成するのは難しいと思われます。専門的な知識を持つコンサルタントなどに相談したほうがスムーズに進むでしょう。
それでは、クリニック開業までにどのような作業が必要なのか、どのような課題があるのか、一連のプロセスを説明します。
心臓血管外科に限ったことではありませんが、クリニックの開業を決めた時点で真っ先に考えるべきは診療方針やコンセプトを固めていくことです。軸がしっかり固まっていないと、開業準備の途中で課題や迷いが生じたときに立ち返るポイントを見失いかねません。
心臓血管外科のクリニックとしてどんな強みを打ち出していくのか、ドクターの得意分野をどのように活かしていくのか、そういったスタンスが開業プランの柱になります。
診療方針やコンセプトが固まったら、それらに基づいて事業計画をつくり込んでいくステップに移ります。繰り返しになりますが、心臓血管外科は初期投資が多額になりがちなので、実現性が高く無理のない計画を組んでいくことが重要です。いざ開業して資金繰りが苦しくなるようなことのないよう、開業コンサルなどの専門家に相談しながら事業計画を検証していくことをおすすめします。
心臓血管外科に要する医療設備は高額なので、相見積もりを取るなどの価格交渉は必ず行なうことです。できれば機器のメーカーは統一してトータルの価格を抑えるなど、初期投資を少なくしたいところです。
内装については、心臓血管外科の対象疾患を抱える患者さんにとってストレスがかからないような雰囲気と動線を検討しましょう。
クリニックのオープンが近づいたら、スタッフの募集を開始します。心臓血管外科クリニックの場合、心臓超音波検査に精通した臨床検査技師の確保が重要なポイントになるでしょう。ホームページの準備もこの時期で、その完成度は集患に直結するので力を入れるべきです。
また、クリニックのオープンには行政に対するさまざまな申請や届出が必要です。専門的な知識を要する作業のため、経験豊富な開業コンサルタントに任せたほうが良いでしょう。
さまざまなプロセスを経てたどり着いたクリニックのオープンは、ドクターにとって人生の大きな節目です。いよいよ経営者として新たなスタートを切るわけですね。
クリニックの売上となる診療報酬は、2ヶ月後から入金が始まります。つまり開業後は収入が患者さんの自己負担金しかありませんので、運転資金に余裕を持ってオープンを迎えることが重要です。