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子育てと仕事の両立に不安を抱えている女性は多く、もちろん医師も例外ではありません。短期的には当直やオンコール対応などの時間外業務が難しかったり、長期的には医師としてのキャリアプランにも影響があったりと、思い悩んでしまうこともあるでしょう。
ここでは女性医師が子育てと仕事を両立するための方法についてまとめています。これから出産を予定している女性医師にも参考になれば幸いです。
勤務医として働く中で当直やオンコール対応が増えてくると、自由になる時間がどんどん少なくなります。医師になったばかりであれば「これも仕事」と割り切れるかもしれませんが、結婚や出産といったライフイベントを経験する年代に差しかかってくると、それまでのようにはいきません。特に女性医師は子育てと仕事の両立がとても難しくなるでしょう。
そのため、多くの女性医師は病院での常勤の勤務を諦めて当直やオンコール対応のない非常勤の勤務に切り替えるようになります。とはいえ、非常勤でも契約した時間内は勝手に持ち場を離れるわけにはいきません。
子どもが小さいうちの急な発熱は日常茶飯事ですし、成長してからも幼稚園や小学校の行事、塾の送り迎えなどで多くの時間を取られます。これでは非常勤の勤務すらも困難です。
子育て中の女性医師は、その多くがお子さんを保育所に預けるか、ご主人やご両親の協力を得ながら仕事を続けているようです。近年では職員向けに託児所を併設している医療機関も多く、お子さんに何かあればすぐ駆けつけられるのでお互いにとって安心です。
いずれにしても、安心できる預け先を見つけられるかどうかが仕事を続けるための必須条件といえるでしょう。
子育て中の女性医師はどうしても労働時間が制限されてしまうので、勤務先に24時間対応の託児所でもない限りは当直やオンコール対応などが困難です。そういった状況を職場の同僚が理解して支援を得られるなら、女性医師にとって働きやすい環境だといえるでしょう。
ただし、そういった配慮を当然のことだと思って甘えっぱなしになってはいけません。限られた勤務時間の中でも、医師として最大限に貢献しようとする意識は忘れたくないものです。
勤務先の人員体制や診療科によっては、子育て中の女性医師でもオンコール対応を求められるケースがあります。その場合は家族を頼らざるを得ませんが、それができずに休職を選択する女性医師も多いようです。
子育てと仕事の両立を目指す女性医師にとって、家族の理解・サポートは非常に大きなポイントといえます。
意外と知られていないのが、医師会や官公庁が主導する女性医師向けの子育て支援制度です。
たとえば、日本医師会女性医師支援センターでは仕事と子育ての両立を支援する制度を紹介しています。さらに厚生労働省では「妊娠・出産・育児中の女性医師が働きやすい職場づくり」を推進しており、勤務環境の見直しや具体的な支援策を提言しています。
最近では短時間勤務制度や子育て支援制度を設けている医療機関も多くなったので、そういった制度の利用を検討するのもいいでしょう。
繰り返しになりますが、子育てと仕事の両立には家族や周囲の協力が不可欠です。特に乳幼児は体調を崩しやすいので、急に仕事を休まなければならないことも多く、臨機応変に対応できる協力体制が望まれます。
ご主人も医師だったり、ご両親が高齢だったりするケースでは協力を得にくいかもしれません。その場合は自治体のファミリーサポートセンターやベビーシッターを利用するのも一手です。さまざまなサポートの選択肢を知っておけば、気持ちにも余裕が生まれてくるでしょう。
お子さんの状況や勤務先の環境はそれぞれ違うので、子育てと仕事の両立に必要な支援も人によって違うのは当然です。そもそもどんな支援制度があるのか、どこで調べればいいのか、わからないこともたくさんあるでしょう。
そんなときは一人で悩まず、上記の医師会や官公庁の相談窓口に問い合わせてみましょう。ある程度の規模の医療機関に勤務しているなら、職員向けの相談窓口を設けているかもしれません。そこで説明を受け、必要な支援の受け方を案内してもらいましょう。
子育てに関して職場の理解や協力が得られないと感じたら、思い切って転職を検討するのもいいでしょう。もし働きやすい職場に巡り合うことができれば、医師と母親の両方をこなさなければならないプレッシャーから少しは解放されるかもしれません。
とはいえ、子育てと仕事に追われながらの転職活動は大変です。そこは医師専門の転職エージェントに相談したりしながら、効率的に転職先を探しましょう。今後のキャリアプランについても相談に乗ってくれるはずです。
非常勤やアルバイトは医療機関で定められた勤務時間に縛られず、比較的自由度の高い働き方が可能です。基本的に契約時間外の業務は発生しないので予定が立てやすく、子育てと仕事を両立させたい女性医師の多くが非常勤を選択しています。
まずは現在の勤務先に相談して、非常勤に切り替えることができるか確認してみましょう。それが難しければ、上記のように転職エージェントに非常勤としての転職先を探してもらうことも可能です。
時間に追われることの多い勤務医とは違い、開業医は自分が働きやすいように時間を調整することが可能です。職場の環境整備を自分の思うようにできることも、勤務医時代にはなかったメリットとして感じられるでしょう。
特に子育て中の女性開業医であれば、診療開始時間を少し遅めにすることで朝の慌ただしさがずいぶん解消されると思います。たとえば診療を10時開始にしておけば、お子さんを学校に送り出したあとも余裕をもって出勤できそうです。
先ほど「職場の環境整備を自分の思うようにできる」とお伝えしましたが、働きやすい環境という意味では完全予約制の導入がおすすめです。子育て中の女性医師にとって、開始時間の微調整ができることや診察終了時間の見込みが立つことは非常にありがたいでしょう。
もちろん医療機関である以上は予期せぬ急患対応などもありますが、それでも一日の仕事量の見通しがつくことはストレスの軽減にもつながり、仕事と家庭の両立に大きく役立つと思われます。
女性の患者さんは同じ女性医師を選ぶ傾向が強く、男性医師に聞きにくいことでも相談しやすい、というのが大きな理由のようです。確かに更年期や月経、尿漏れといったセンシティブな悩みは同じ女性のほうが話しやすいでしょう。
また、女性の患者さんが多くなると、ネットに頼らなくても口コミで評判が広がって患者さんが増えてきます。こういう患者さん同士のつながりは、女性医師ならではの影響力といえるかもしれません。
医療の現場は圧倒的に女性が多い職場であり、クリニックであれば院長以外のスタッフが全員女性というケースが多いでしょう。院長が女性医師なら同じ女性としてスタッフを理解できることも多く、協力・連携体制を築きやすいと思われます。
たとえば、お子さんが急に体調を崩して学校から呼ばれたときなどは、スタッフが事情を理解しているので率先して患者さんのサポートにあたってくれるでしょう。
スタッフが全員女性の場合、患者さんからのクレームやトラブルへの対応が難しいケースがあります。執拗な訴えを続ける患者さん、大声で怒りをぶつけてくるような患者さんには、男性スタッフが対応したほうが収まりやすいという面があるでしょう。
万が一に備えて、セキュリティーサービスを導入しておくことも検討すべきです。
スタッフ同士の距離が近いと、アットホームな雰囲気で和気あいあいと仕事ができるかもしれませんが、距離が近すぎてしまい思わぬトラブルが起きることも。ついつい言い過ぎてしまったり、プライベートに踏み込み過ぎたりしてしまうと、スタッフ同士のトラブルにも発展しかねません。
仕事における人間関係は、一定の距離感が重要であることを心得ておきましょう。
「育児は夫婦で協力すべきもの」という考え方が社会に浸透してはいるものの、やはり女性の負担が大きいのが現実です。女性医師にとって、子育てを続けながら医師としてのキャリアを積んでいくのは大きなテーマであり、想像以上に体力・精神力を要します。
その一方で、子育てと仕事を両立させるための社会的な制度も整いつつあります。周囲のサポートや利用できる制度を最大限に活用し、自身が理想とする医師のキャリアプランを実現に近づけていきましょう。