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北海道で耳鼻咽喉科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、耳鼻咽喉科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
耳鼻咽喉科は、花粉症や風邪症状といったプライマリーケアから頭頚部がんなど専門性の高い医療まで、非常に幅広い領域をカバーしています。
一方で耳鼻咽喉科医師の数は勤務医も開業医もまだ十分とはいえず、これは北海道においても同様の傾向が考えられます。したがって、フットワークの軽い地域密着型の耳鼻咽喉科クリニックのニーズは高いといえるでしょう。そこが耳鼻咽喉科クリニックを開業する最大のメリットだと思われます。
耳鼻咽喉科クリニックを開業するデメリットとして挙げられるのは、設備投資が高額になりがちなところです。耳鼻咽喉科は患者さん1人あたりの単価が低いので、多くの患者さんを診なければ経営が立ち行かなくなります。そのため、広い待合スペースを確保しなければなりません。
また、耳鼻咽喉科は「耳鼻咽喉科用治療ユニット」といった医療機器を取りそろえる必要があります。こうした事情から、他の診療科よりも投資予算が高くなることが予想されます。
集患に成功している耳鼻咽喉科クリニックに共通しているのは、ウェブ対策がしっかりしていることです。耳鼻咽喉科を受診する患者さんの多くは、ホームページを見て来院しています。実際にアンケートなどで来院のきっかけを調査してみると、患者さんの半数以上がホームページを見て来院している、という耳鼻咽喉科クリニックは数多くあります。
ウェブ上でクリニックの情報をしっかり発信することが、クリニックを成功させる条件のひとつだといえるでしょう。
初期投資のかけすぎは開業失敗につながる重要なポイントです。特にハウスメーカーが主導する戸建て開業などは、自己資金が潤沢でなければ、患者さんが多く集まる前に経営面で厳しくなってしまう可能性が高くなります。医療機器への投資もそうですが、土地や建物など不動産に対する投資も慎重に行なうべきです。
広大な面積ゆえに医療の地域格差が顕著な北海道。人口も一極集中化傾向がみられ、クリニックの新規開業を検討する場合はこのような背景を考慮しないわけにはいきません。
いわゆるへき地と呼ばれるエリアでは、自治体も内科系などメジャーな診療科の整備を優先するので、耳鼻咽喉科のように専門性の高い診療科の新規開業は多くありません。実際、新規に開業したとしても診療圏の将来的な人口減少が見込まれるのであれば、いずれ経営は厳しくなるでしょう。となると、必然的に開業候補地は今後も人口を維持できるエリアが選択されます。
都市部で耳鼻咽喉科クリニックの新規開業を検討する場合、どんな患者層をターゲットにするかでオフィス街、住宅街など立地の選択肢も変わってきます。患者さんの交通手段に加えて、寒冷地ならではの積雪の問題もあります。耳鼻咽喉科は繰り返し通院するケースが多いので、アクセスの良さはクリニックの経営に直結するでしょう。
こうした諸々を踏まえて開業予定地を絞り込んでいくのは、ドクター一人ではなかなか難しいものです。ここはやはり、地域医療に精通した経験豊富な開業コンサルタントに相談するのが望ましいと思われます。プロの視点でのアドバイスを受けて、開業に有利な物件を見つけましょう。
北海道には約2,700のクリニックが存在し、うち約180が耳鼻咽喉科系クリニックです(2021年11月現在)。人口10万人あたりの耳鼻咽喉科系クリニック数は全国平均の4.58施設に比較して3.54施設と、北海道は不足傾向にあります。
とはいえ、このデータは北海道全体の平均値であり、上記のとおり人口格差・医療格差が顕著な北海道の場合は地域によって大きな偏りがあるでしょう。専門性の高い耳鼻咽喉科系クリニックであればなおさらです。
どの診療科にもいえることですが、開業時期が世の中のニーズに合っているかどうかは非常に重要です。耳鼻咽喉科であれば、花粉症シーズンに開業するほうが有利でしょう。クリニックのさまざまなランニングコストは、当然ながら開業してすぐにかかってきます。経営が軌道に乗るまで時間がかかることを考えると、開業当初から多くの患者さんが来てくれるに越したことはありません。
開業後のスタートダッシュを成功させて余裕を生むためにも、開業のタイミングは慎重に検討すべきです。
耳鼻咽喉科はお子さんから年配者まで幅広い年代の患者さんが対象になりますが、ターゲットを絞り込んだほうが開業エリアを決めやすくなり、競合先との差別化も図れます。設備投資の面からも、診療の範囲を広げすぎないことが大切です。
耳鼻咽喉科に限らず、クリニックの開業にあたって大切なのは綿密な経営戦略を立てることです。マーケティングをしっかり行ない、クリニックの方向性や狙うべき患者層などを明確にしておきましょう。
たとえば、お子さんをターゲットにするのであれば住宅地や小学校、幼稚園の近くで駐車場が広く取れるような物件が望ましく、働く世代をターゲットにするのであれば駅周辺の立地で、診療内容をわかりやすく打ち出していくべきです。こうした考え方が、競合先との差別化にもつながっていきます。
耳鼻咽喉科クリニックの開業資金は設備投資の内容によって大きく幅がありますが、平均するとテナント開業で4,000~6,000万円程度が大まかな資金の目安です。ただし、CTなど高額な医療機器を導入したり、軽い手術もできるような設備を整えたりすると、初期投資が1億円を超えてしまうかもしれません。最初は必要最小限の投資で様子を見つつ、患者さんが増えて経営が軌道に乗ってきたら買い足していくのがおすすめです。
次に年収をみてみましょう。
耳鼻咽喉科医師の平均年収は、統計データ上(※)では施設・設備の維持にかかる内部資金を含む約1,900万円(2018~2019年)となっており、診療科全体の平均を下回っています。とはいえ、都心部と郊外では年収に大きく差があり、中には実質収入で5,000万円を超えるようなドクターもいます。ただ、耳鼻咽喉科は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けている診療科のひとつなので、これからデータも変動することが予想されます。
耳鼻咽喉科クリニックは相応の設備投資が必要であり、開業時はもちろん、患者さんがつくまでは経営が不安定なため、まとまった資金が必要になることがあります。
北海道では、都市銀行よりも地方銀行や進行金庫のほうがクリニックに対する融資に積極的な印象があります。金融機関以外の資金調達方法としては、北海道医師会の「特約融資制度」なども検討することをおすすめします。
耳鼻咽喉科領域では、日本耳鼻咽喉科学会が認定する耳鼻咽喉科専門医がもっともメジャーな資格だといえます。
ただし、患者さんの立場から考えると、アレルギー専門医や補聴器相談医といった資格のほうがわかりやすいかもしれません。いずれにしても、クリニックの方向性に合った専門医資格を取得しておけば、開業時の集患対策に役立つでしょう。
クリニックの開業プランの立案において最初にやるべきは、経営理念やコンセプトを固めることです。そして開業エリアを検討する際には、必ず綿密な診療圏調査、競合調査を行ないましょう。
耳鼻咽喉科は幅広い年代の患者さんが来院するので、視認性に優れた低層階の物件がおすすめです。
医療モールを選択する場合は、内科や小児科のクリニックと診療内容がバッティングしないか、すり合わせておきましょう。
治療用ユニットや医療機器の選定については、繰り返しになりますが過剰投資にならないよう慎重に検討しましょう。
耳鼻咽喉科は患者数が多くなるので、待合スペースは広めにしたほうが無難です。それが難しければ、開業後に予約制を導入して混雑を緩和させるのも一手といえます。
また、治療用ユニットやネブライザーの設置の仕方によって患者さんの動線も大きく変わるため、他のクリニックの内装事例を参考にするのもいいかもしれません。
オープンが近づいたら、看護師や事務スタッフの採用準備を始めます。耳鼻咽喉科は採用面において人気のあるほうではないので、できるだけ早めの募集を行ないましょう。
同時にホームページの準備も進めていきます。ホームページは集患に直結するので、制作には力を入れたいところです。
また、開業に際しては行政に対するさまざまな申請が必要です。この作業には専門的な知識が不可欠で、ドクターが独力で処理するのは困難です。申請に不備があると開業スケジュールにも影響するため、そこは経験豊富な開業コンサルタントに依頼することをおすすめします。
待ちに待ったクリニックのオープン、その日からドクターは経営者としても第一歩を踏み出すことになります。
すぐに多くの患者さんが来てくれるといいのですが、なかなかそうはいきません。診療報酬の入金は2ヶ月後から始まるため、それまでは無収入でもクリニックを運営できるよう、開業時は資金的な余裕を持っておくことが大切です。