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ここでは、クリニックの開業を成功させる上で重要な診療科目について、それぞれの特徴や開業ポイントを解説しています。まずは診療科目ごとの情報を把握した上で、将来的にどのようなクリニックを運営していきたいか考えていきましょう。
高齢化が進む日本では、人生の質を高める目的で歯科医療に対する需要が高まっています。また虫歯や歯周病の治療を目的とした歯科クリニックだけでなく、インプラントやホワイトニングなど審美目的の患者に特化したクリニックもあります。
高齢化に伴って泌尿器科の病気に悩む患者さんは増える一方で、特に高齢者が多いエリアでは泌尿器科クリニックのニーズが高まっているようです。そうした特性から、プライバシーにも配慮された通いやすいクリニックが求められています。
一般内科を開業する場合、近隣の人を対象として治療を提供することが一般的です。そのため、近隣に競合他社となるクリニックがないか事前に確認します。また、差別化戦略として利便性の追求や専門性のアピールも重要です。
少子化が止まらない日本では、小児科を専門に扱うクリニックも減少傾向です。しかし子育て世帯が多く暮らすエリアでは重視されます。開業時の物件選びでは衛生面はもちろん、駐車場や授乳室など利便性の確保も必須です。
整形外科の患者にはケガをした若者だけでなく、運動機能に悩みを抱える高齢者も少なくありません。そのため移動に負担の少ない間取りやバリアフリー化、リハビリに対応できるスタッフの拡充といった点も意識します。
高齢者が増えるに従って、白内障など加齢に伴う目の病気も増えていくことは必然です。日帰り手術によって気軽に通えるといったメリットをアピールするためにも、通院のしやすさなどに配慮することもポイントです。
皮膚科は治療を目的とした患者に加えて、美容皮膚科としての治療を受けたい人からのニーズもあります。特に美肌目的で訪れる人に対して、新しい機器による美肌治療や清潔な内装といった点を意識したクリニックづくりも可能です。
例えば子供が風邪を引いた際に、小児科でなく耳鼻咽喉科を受診する親は珍しくありません。また日本人の国民病とも言われる花粉症やアレルギーに悩む人は多く、患者が気軽に通えるような立地条件を検討することは大切です。
晩婚化や高齢出産が当たり前になりつつある現代日本では、単に子供を産むための場所でなく、きちんと患者の心身をケアできる環境が重要となります。そのため、女性からの信頼を得られるような開業プランを考えます。
不妊に悩むカップルへ不妊治療を専門に提供するクリニックも人気です。不妊は女性だけでなく男性に原因がある場合も多く、患者のプライバシー保護を徹底することはもちろん、女性にも男性にも配慮できる環境を意識しましょう。
高ストレス社会において、メンタル面のケアをできるクリニックへの需要は高まっています。長期間の治療が必要になることも多い精神科・心療内科では、クリニックへリラックスして通院できるプランニングを考えます。
胃腸炎などのありふれた病気から悪性の疾患まで、消化器内科は領域、年齢層ともに幅広い患者さんを受け入れる必要があります。特にがんの早期発見などを目的とした内視鏡検査はニーズが増える一方で、現在では消化器内科クリニックに欠かせない設備と技術だといえるでしょう。
息切れや喘息などで悩む患者さんに加えて目下の新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響など、呼吸器内科の医療ニーズはどんどん高くなっています。他の内科系診療科との親和性も高いので、他院との医療連携を強化して集患力を高めていくような戦略がおすすめです。
人口の高齢化に伴って高血圧や虚血性心疾患などの循環器疾患が増えており、循環器内科を標榜するクリニックは増えています。多くの患者さんがついて経営が安定するまで時間がかかるので、開業当初は幅広く患者さんを受け入れつつ専門特化を目指したほうがいいでしょう。
高齢化によって脳血管障害などの患者さんが増えていることで、脳神経外科の医療ニーズは年々高まっています。専門性が高い一方で他の診療科との競合性は低いため、病診連携・診診連携を推進して強い集患力を確立していく戦略が求められます。
女性活躍社会の実現を目指す風潮の中で、女性の予防医学の一端を担う乳腺外科の存在は大きくなりつつあります。乳がん検診などを中心に広く患者さんを受け入れる一方、女性特有の診療科としての空間づくり、雰囲気づくりも欠かせません。
専門医の多くが病院勤務で、開業は少数派となっている心臓血管外科ですが、それだけに成功のチャンスを十分に秘めた診療科です。経営戦略として循環器内科との棲み分けを検討し、心臓のことなら幅広く対応できるという強みを打ち出していくことが重要になります。
内科系領域の中でも専門性が高い糖尿病内科・内分泌内科・甲状腺科は、一般内科にはない付加価値を提供しつつ、合併症もカバーできる総合内科的な診療体制も求められます。固定患者さんをいかに獲得できるかがクリニック成功のカギとなるでしょう。
今や国民病ともいえるほど罹患率が上がっている糖尿病の影響で、透析を受ける患者さんも年々増加傾向にあります。腹膜透析や在宅透析といった専門性の高い診療に加え、送迎サービスや夜間・休日透析など患者さんのニーズを満たす強みを打ち出すことが、固定患者さんを増やしてクリニックの経営を安定させるポイントになります。
単独標榜ではなく、皮膚科や美容外科などを併せて標榜することで男女問わず幅広い世代の集患を期待できるのが形成外科の特徴です。
専門性の高さや得意分野をアピールすることが集患につながるほか、美容医療を展開する場合はクリニックの立地やプライバシーの確保、アメニティの充実など、治療面以外にもさまざまな要素が収支に影響する診療科でもあります。
進行が確実な少子高齢化社会によって、脳血管系の疾患をはじめとする神経内科領域の診療ニーズも、今後増加していくことが見込まれます。
ただ、専門性が高い一方で、一般市民からの認知度はそれほど高くありません。クリニックが受け入れ可能な疾患やドクターの得意分野を明確に打ち出すことが、開業の成功・失敗を左右するポイントになるでしょう。