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北海道で皮膚科クリニックを開業して成功させるためには、どのような点に考慮して計画を立てるべきでしょうか。
このページでは、皮膚科クリニック開業のポイントを解説していきます。開業を検討しているドクターはぜひ参考にしてください。
最近では保険診療だけではなく、美容皮膚科など自費診療を併設した皮膚科クリニックも増えています。これは皮膚科が幅広い年代にニーズがあるということの現れでしょう。
保険診療であれば幼児や慢性疾患の患者さんが多く、自費診療であれば若い世代から中年にかけての女性患者さんが多くなる傾向にあります。いずれにしても、肌の悩みを抱えている患者さんは増加傾向にありますので、ニーズが高い診療科には違いありません。
皮膚科は、診療科の中でも比較的診療単価が低い科目だといわれています。したがって、他の診療科よりも多くの患者さんを診なければ利益が出ません。つまり、限られた診療時間の中でも数で勝負しなければならないのです。
ゆっくり患者さんに向き合いたい、そう願うドクターは開業後に厳しい現実に直面するかもしれません。
皮膚科を受診する患者さんは何度も通うケースが多いので、駅周辺やオフィス街といった好アクセスの立地は成功条件のひとつになります。
また、形成外科やアレルギー科など親和性の高い診療科を併設し、季節変動の大きい皮膚科でも通年にわたって多くの患者さんを受け入れているケースもあるようです。
皮膚科クリニックでもっとも多い失敗は、開業時の過剰投資です。特に美容系医療機器は1,000万円を超えるものもざらで、開業時の買い物としてはかなり高額です。美容皮膚科を掲げても最初から多くの患者さんが来院することはほとんどないので、採算が合わず運営面で苦しむことにもなりかねません。
人口の一極化傾向が顕著な北海道では、札幌市をはじめとした都市部に医療資源が集中しています。皮膚科も例外ではなく、クリニックが多いエリアでは一般皮膚科、美容皮膚科とも競合先同士がしのぎを削っている状況です。
数ある診療科の中でも、皮膚科は親和性の高い診療科が多いと考えられます。また、幅広い年代の患者さんにニーズがあるので、ターゲットを絞っていくのか、領域を問わず多くの患者さんを受け入れていくのか、戦略次第で開業エリアも変わっていくでしょう。
しかし、地域ごとの人口格差・医療格差が大きい北海道ですから、視点を少しずらすだけでも候補地が入れ替わり、なかなか物件を決めきれないことも多いかもしれません。ひと口に患者さんが通院しやすい場所といっても、寒冷地ならではの積雪や交通手段の問題もあります。北海道の地域特性を考慮すると、皮膚科に限らず開業予定地を決めるのは本当に難しいものです。
ここはやはり、北海道の地域医療に精通した地場の開業コンサルタントを利用するのが賢明かもしれません。医療ニーズだけではなく、将来的な人口推移や競合先の状況などを踏まえた的確なアドバイスを受けて、クリニック開業を成功へと導いていきましょう。
北海道には約2,700のクリニックが存在し、うち約260が皮膚科系クリニックです(2021年11月現在)。人口10万人あたりの皮膚科系クリニック数は全国平均の9.92施設に比較して4.98施設と、北海道は不足傾向にあります。
ただし、このデータは北海道全体における数字のため競合先が多いエリアも確実に存在します。単純に皮膚科が不足しているから開業ニーズの余地がある、という考え方は非常に危険です。
大学医局に在籍しているドクターであれば、人事の関係もあって新規開業は春先や秋口に集中することが多いようです。しかし、診療科によってはクリニックの繁忙期が変わります。
皮膚科の場合、保険診療に限っていえば夏場は汗疹(あせも)や水虫などが増え、冬場は比較的落ち着きます。こうした需要を踏まえたタイミングで開業できれば、最初から多くの患者さんの獲得につながるかもしれません。
皮膚科は美容皮膚科領域にどれくらい力を入れるかによって、投資予算は大きく変わってきます。お金をかけようと思えばいくらでもかけられるのが皮膚科クリニックの特徴ともいえるでしょう。
もちろん、最初から過剰な投資は禁物です。クリニックの経営が軌道に乗ってきた段階で徐々に機器を増やしていくべきです。テナント開業で保険診療を中心にして開業する場合は、概ね5,000万円以内に抑えておきたいところです。
統計データによると、皮膚科開業医の平均年収は約2,700万円となっています。実際には、美容皮膚科をどこまで行なうかによっても変わってくるでしょう。美容皮膚科のような自費診療はクリニックで料金を設定するので、患者さんが増えれば収入も大きくアップします。
クリニックの資金調達に関しては、北海道の場合は地方銀行や地元の信用金庫のほうが都市銀行に比べてフットワークが軽い印象があります。事業計画や返済予定がしっかりしていれば、前向きに検討してもらえるでしょう。
しかし、そうした必要資料を医師個人が作成するのは困難だと思われます。開業コンサルタントなど経験豊富な専門業者に任せるのが無難でしょう。
皮膚科領域の専門医資格は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医がメジャーな資格だといえます。
また、アトピー性皮膚炎などアレルギー性の皮膚疾患を多く受け入れるのであれば、アレルギー専門医資格も患者さんに向けた情報発信に役立つでしょう。
専門性という意味では、もし小児皮膚科を診ることができるならそれも大きなアピール材料です。「お子さんの肌トラブルにも対応します」というキーワードは、子育て世代に認知されやすくなります。
どの診療科でも同じですが、開業を決めて最初に考えるべきは経営理念や事業コンセプト、そして開業時期です。北海道は広く、さまざまな地域性がありますので、それを十分に検討して診療内容に特色のある事業コンセプトを掲げたいところです。
物件に関しては、テナント開業であれば少なくとも1年程度の準備期間が必要です。希望する開業時期から逆算して、物件を探していく必要があります。
ある程度の開業プランが固まったら、次はそれを検証していく段階に移ります。
皮膚科は小さなお子さんから年配の方まで、男女問わず幅広い患者層が特徴です。患者さんのターゲットを絞って戦略的な診療を行なうことを前提に、それに見合った設備投資と資金調達の目処を立てていきましょう。
地元の医師会や保健所、厚生局へのアプローチもこの時期に始めますが、必要に応じて開業コンサルタントの協力も得ながら進めていきます。
皮膚科クリニックはレントゲンなどの大きな検査室は不要なので、コンパクトなスペースで十分です。ただ、内装に関しては皮膚科ならではの細かい配慮が必要です。
皮膚疾患の患者さんのために、入口は自動ドアでスリッパに履き替える必要がないなど、極力備品に触れなくても済むようにしましょう。美容皮膚科の有無にかかわらず、パウダールームの設備に力を入れると患者さんからの好感も得られます。
できれば開業コンサルタントや専門の業者とも相談し、その知見を参考に内装を決めていくのがいいでしょう。
開業が近づいたらスタッフの採用やホームページ作成に取りかかります。
行政手続きに関しては、保健所や厚生局などさまざまな申請書類が必要になります。こちらは医師が個人で対応するのは限界があると思われますので、プロである開業コンサルタントにお願いしたほうがいいかもしれません。
皮膚科クリニックは口コミ評判に大きく左右される傾向にあります。開業してすぐに多くの患者さんが来院するということはまずありませんが、丁寧かつ誠意のこもった診療を続けていきましょう。それが評判を呼び、遠からず患者さんに信頼されるクリニックとして地域に認知されていくはずです。